ストレスチェック制度とは?50人未満の事業場も2028年4月義務化|中小企業の準備5ステップ
2026.09.25
- ウェルビーイング
「ストレスチェックって、うちの会社もやらないといけないの?」――そんな疑問を持つ経営者や人事担当者、そして働く人が今、急速に増えています。2025年に成立した改正労働安全衛生法により、これまで従業員50人以上の事業場に限られていたストレスチェックの実施義務が、2028年4月1日から従業員50人未満のすべての事業場にも拡大されることが決まったためです。日本の企業の大多数を占める小規模な職場にとって、これは他人事ではありません。
本記事では、ストレスチェック制度の基本的な仕組みから、法改正のポイント、最新の統計データ、そして中小企業が今から進めておきたい準備の5ステップまでをわかりやすく解説します。働く人自身が結果をセルフケアに活かすヒントも紹介しますので、経営側・従業員側のどちらの立場の方もぜひ参考にしてください。
ストレスチェック制度とは?目的と基本の仕組み

ストレスチェック制度とは、労働安全衛生法第66条の10に基づき、労働者の心理的な負担(ストレス)の程度を把握するために実施される検査のことです。2015年12月に従業員50人以上の事業場を対象に義務化されました。年に1回以上、質問票(一般的には57項目の「職業性ストレス簡易調査票」など)に労働者が回答し、その結果からストレスの状態を数値で「見える化」します。
この制度の最大の目的は、うつ病などのメンタルヘルス不調を「発症してから対応する」のではなく、不調になる前に気づいて予防する「一次予防」にあります。ポイントは次の3つです。
- 結果は本人に直接通知される:検査結果は実施者(医師や保健師など)から労働者本人に通知され、本人の同意なく会社に提供されることはありません。
- 高ストレス者には面接指導:結果が「高ストレス」と判定され、本人が希望した場合には、医師による面接指導が行われます。
- 職場環境の改善につなげる:部署ごとの集団分析を行い、仕事の量や職場の人間関係といったストレス要因を組織的に改善するきっかけにできます。
なお、ストレスチェックの結果を理由に、解雇や配置転換などの不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。「受けたら評価に響くのでは」という心配は制度上不要です。
法改正のポイント|50人未満の事業場も2028年4月から義務化

これまで従業員50人未満の事業場では、ストレスチェックの実施は「努力義務」にとどまっていました。しかし、2025年5月に成立した改正労働安全衛生法により、この義務が50人未満の事業場にも拡大されます。中央労働災害防止協会のQ&Aなどで示されている改正のポイントは次のとおりです。
- 施行日は2028年(令和10年)4月1日:施行日から1年以内に、最初のストレスチェックを実施する必要があります。
- 対象はすべての事業場:常時使用する労働者が1人でもいれば対象になります。パート・アルバイトでも、契約期間1年以上かつ週所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば実施対象です。
- 産業医の選任や衛生委員会の設置までは求められない:50人未満の事業場では、産業医・衛生管理者の選任や衛生委員会の設置は不要のままです。実施にあたっては外部機関への委託が推奨されています。
- 労働基準監督署への結果報告は不要:50人以上の事業場に課されている実施状況の報告義務は、50人未満には適用されません。
- 高ストレス者への面接指導は必要:本人が希望した場合の医師による面接指導は、事業場の規模にかかわらず法定の要件です。
国は施行までに50人未満の事業場向けの実施マニュアルを作成する予定としており、細かな運用は今後具体化されていきます。制度の詳細や最新の施行情報は、厚生労働省の公式情報で確認するようにしてください。
データで見る職場のストレスの現状

「そもそも、それほど大きな問題なのか?」と感じる方もいるかもしれません。厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」からは、日本の職場のストレスの実態が見えてきます。
- 仕事や職業生活に関して強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者は68.3%。前年調査の82.7%からは低下したものの、依然として約7割の働く人がストレスを抱えています。
- ストレスの内容は「仕事の量」が43.2%で最多。次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が36.2%、「仕事の質」が26.4%と続きます。
- メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所は10.2%、退職した労働者がいた事業所は6.2%にのぼります。
一方で、対策の実施状況には事業場の規模による差がはっきり表れています。メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合は全体で63.2%ですが、規模別に見ると労働者1,000人以上の事業場ではほぼ100%、50人以上では9割超に対し、30〜49人では69.1%、10〜29人では55.3%にとどまります。ストレスチェックの実施率も同様に、小規模事業場ほど低いのが現状です。今回の法改正は、まさにこの「規模による格差」を埋めることを狙ったものといえます。
従業員数が少ない職場ほど、一人の不調が業務全体に与える影響は大きくなります。「人数が少ないからこそ対策が必要」と捉えることが重要です。
中小企業がすべき準備5ステップ

施行は2028年4月ですが、体制づくりには時間がかかります。直前になって慌てないために、次の5ステップで計画的に準備を進めましょう。
ステップ1:方針の決定と社内周知
まず経営者がストレスチェック実施の方針を表明し、「何のためにやるのか」「結果はどう扱われるのか」を従業員に説明します。目的が共有されていないと回答率が上がらず、形だけの実施になりがちです。
ステップ2:実施体制の検討(外部委託が現実的)
実施者となれるのは医師・保健師など一定の資格を持つ者に限られます。50人未満の事業場では社内に有資格者がいないケースがほとんどのため、外部のストレスチェックサービスや健診機関への委託が現実的です。地域産業保健センター(さんぽセンター)では小規模事業場向けの無料支援も行われています。
ステップ3:実施ルールの整備
実施時期(年1回いつ行うか)、対象者の範囲、高ストレス者の選定基準、結果の保存方法(実施者側で保存し、本人の同意なく会社は閲覧しない)などを文書化します。
ステップ4:面接指導につなげる体制の確保
高ストレス判定を受けた従業員が希望した場合の、医師による面接指導の依頼先をあらかじめ決めておきます。委託先のサービスや地域産業保健センターを活用できます。
ステップ5:不利益取り扱い禁止の徹底と職場改善への活用
結果を人事評価に使わないことを明文化し、管理職にも周知します。そのうえで、集団分析の結果を業務配分の見直しや残業削減など、職場環境の改善に活かせれば、制度は「義務」から「経営に効く投資」に変わります。健康経営に取り組む企業では、ストレスチェックのデータ活用が定着の第一歩になっています。
働く人自身ができるセルフケアのポイント

ストレスチェックは会社の義務であると同時に、働く人にとっては年に1回、自分の心の状態を振り返る貴重な機会です。結果を受け取ったら、次のように活用してみてください。
- 結果を「働き方の健康診断」として読む:ストレスの原因が仕事の量なのか、人間関係なのか、体の疲労なのかを確認し、自分の働き方を見直すきっかけにします。
- 生活習慣の土台を整える:ストレス対処の基本は、十分な睡眠・適度な運動・バランスの取れた食事です。当サイトの運動習慣ゼロから始める「週150分」の作り方やデスクワークの「座りすぎ」対策も参考にしてください。
- 一人で抱え込まず相談する:高ストレス判定が出てつらさを感じているときは、遠慮せず医師による面接指導を申し出ましょう。申し出を理由とする不利益な取り扱いは禁止されています。社外の相談窓口(厚生労働省「こころの耳」など)も利用できます。
最後に、準備を進める中でよくある質問に答えておきます。
Q. 「50人」は会社全体の人数ですか?
A. いいえ、数えるのは会社単位ではなく「事業場」単位です。本社・支店・店舗など、場所ごとに常時使用する労働者数で判断します。派遣労働者へのストレスチェックの実施義務は派遣元の会社にあります。また、経営者・役員は実施対象に含まれません。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 外部委託の場合、一般に従業員1人あたり数百円〜が目安とされますが、面接指導の有無やオプションで変わります。複数のサービスから見積もりを取り、最新の料金は各社の公式情報で確認してください。地域産業保健センターの無料支援の活用も検討しましょう。
Q. 集団分析もやらなければいけませんか?
A. 部署ごとの集団分析と職場環境改善への活用は、現行制度では努力義務です。ただし、せっかく実施するなら集団分析まで行うことで、ストレスチェックを職場改善に活かせます。従業員数が少ない事業場では個人が特定されないよう、集計単位に配慮が必要です。
なお、本記事は制度と公開データの解説であり、個別の医学的なアドバイスではありません。制度の運用詳細は今後示される厚生労働省のマニュアル・公式情報を確認し、心身の不調が続く場合は医療機関や専門家に相談してください。
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Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。
