運動習慣ゼロから始める「週150分」の作り方|厚労省・WHO推奨を無理なく達成する5ステップ
2026.09.24
- ウェルビーイング
「運動が体にいいのは分かっているけれど、続いたためしがない」——そんな方は少なくありません。厚生労働省の令和6年「国民健康・栄養調査」によると、運動習慣がある人(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続)は成人の34.6%にとどまり、男性38.5%、女性31.5%と、およそ3人に2人は運動習慣がないのが現状です。一方で、WHO(世界保健機関)や厚生労働省は「週150分」の身体活動を健康維持の目安として推奨しています。本記事では、運動習慣ゼロの人が「週150分」を無理なく達成するための5つのステップを、公的ガイドラインに基づいて解説します。
なぜ「週150分」なのか?WHO・厚労省の推奨と日本人の現状

WHOの身体活動ガイドラインでは、成人に対して「中強度の有酸素性身体活動を週150〜300分」または「高強度の身体活動を週75〜150分」行うことを推奨しています。中強度とは、早歩きのように「会話はできるが歌は歌えない」程度の負荷です。WHOはまた、世界の成人の約3割が推奨レベルの身体活動を満たしていないと報告しており、運動不足は世界的な健康課題とされています。
「中強度」の具体例も知っておくと計画が立てやすくなります。運動の強さは「メッツ」という単位で表され、普通歩行は約3メッツ、早歩きは約4メッツ、階段をゆっくり上る動作は約4メッツ、自転車(通勤程度)は約4〜6メッツ、掃除機かけや庭仕事も約3〜4メッツに相当します。つまり、スポーツウェアに着替えてジムに行く活動だけでなく、日常の家事や移動もカウントしてよいのです。
日本では、厚生労働省が2024年1月に「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。成人向けの推奨は、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上、そして筋力トレーニングを週2〜3日というものです。合計すると、WHOの「週150分」とおおむね整合する水準です。
「週150分」を満たすことのメリットは、生活習慣病の予防だけではありません。身体活動量が多い人ほど、心疾患・脳血管疾患・一部のがん・うつ症状などのリスクが低いことが国内外の多くの疫学研究で報告されており、WHOも身体活動をメンタルヘルスや認知機能の維持に役立つものと位置付けています。運動は「体のため」だけでなく「心と仕事のパフォーマンスのため」の投資でもあるのです。
重要なのは、同ガイドの基本方針が「個人差をふまえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む。今よりも少しでも身体を動かす」とされている点です。つまり、最初から週150分を目指す必要はなく、「今よりプラス10分」から始めることが公式に推奨されているのです。
ステップ1・2:ハードルを極限まで下げて「動く仕組み」をつくる

ステップ1は「目標を小さく分解する」ことです。週150分と聞くと大変に思えますが、1日あたりに直せば約21分、平日だけなら1日30分です。さらに、10分×2〜3回に分割しても健康効果は得られるとされています。最初の2週間は「1日10分の早歩き」だけを目標にしましょう。達成できる目標を立てて成功体験を積むことが、習慣化の第一歩です。習慣化の研究では、新しい行動が自動化するまでに平均で2カ月程度かかるとされます。最初の2カ月は「量より継続日数」を目標にしましょう。
ステップ2は「行動のハードルを下げる」ことです。人が運動をやめる理由の多くは、意志の弱さではなく「準備が面倒」という環境要因です。次のような工夫が有効です。
- 前夜にウェアとシューズを玄関に置いておく
- 着替え不要の服装・靴で通勤し、帰り道に一駅歩く
- 「歯磨きの後にスクワット10回」のように、既存の習慣に運動をひも付ける
特に3つ目の「既存の習慣へのひも付け(習慣の連結)」は行動科学でも有効性が知られており、新しい行動を単独で覚えるより定着しやすくなります。
ステップ3・4:日常生活に埋め込む「ながら運動」と歩数の見える化

ステップ3は「生活活動を運動に変える」ことです。ガイド2023が推奨する1日8,000歩は、ジムに行かなくても日常の工夫で近づけます。通勤や買い物の歩行を「早歩き」に変えるだけで中強度の身体活動になり、エレベーターを階段に置き換えれば短時間で強度の高い活動が確保できます。デスクワークの人は、30分〜1時間に一度立ち上がって歩くだけでも、座位行動の中断として意味があります。座りすぎのリスクと対策は「デスクワークの「座りすぎ」対策」でも詳しく解説しています。
ステップ4は「歩数の見える化」です。スマートフォンの標準ヘルスケアアプリや歩数計アプリで、まず1週間、何もせず自分のベースライン歩数を測ってみましょう。「平日は4,500歩、休日は2,000歩」といった現状が分かれば、「まず+1,000歩」という具体的な目標が立てられます。記録が残ること自体がモチベーションになり、達成率を高めることが多くの研究で示唆されています。
参考までに、週150分に到達するモデルプランを2つ紹介します。平日分散型は「通勤で片道10分の早歩き(往復20分×平日5日=100分)+週2回の筋トレ各15分(30分)+週末に20分のウォーキング」で合計150分。週末集中型は「平日は1日10分の早歩き(50分)+土日に30〜50分のジョギングやサイクリング(60〜100分)」で合計110〜150分です。自分の生活リズムに合わせて、どちらの型が現実的かを選びましょう。大切なのは「特別な時間を新しく作る」のではなく「既にある移動や家事の時間を活用する」発想です。
ステップ5:筋トレ週2〜3回をプラスして効果を最大化する

ガイド2023の大きな特徴は、成人・高齢者ともに筋力トレーニングを週2〜3日行うことが明記された点です。筋トレは器具やジムがなくても、自宅の自重トレーニングで十分に始められます。初心者には次の3種目がおすすめです。
- スクワット:下半身の大きな筋肉をまとめて鍛える。10回×2セットから
- 膝つき腕立て伏せ:胸・腕・体幹。5〜10回×2セットから
- プランク:体幹。20〜30秒×2セットから
1回あたり10分程度で終わる内容で構いません。「有酸素は毎日少しずつ、筋トレは火・金」のように曜日で固定すると忘れにくくなります。筋肉量の維持は将来の転倒・介護予防にも直結するため、20〜50代のうちから始める価値があります。なお、睡眠不足は運動のパフォーマンスと継続意欲を下げます。運動と併せて「働く人の睡眠の質を高める10の習慣」も参考にしてください。
続かない人のためのチェックリストとNGパターン

最後に、習慣化のためのチェックリストです。
- □ 目標は「1日10分」など、確実に達成できるサイズにしたか
- □ 運動する時間帯と曜日を決めて、カレンダーに入れたか
- □ ウェア・シューズなど準備のハードルを下げたか
- □ 歩数・実施日を記録する仕組みをつくったか
- □ 家族・同僚への宣言や、一緒にやる仲間づくりをしたか
- □ できない日があっても「ゼロか100か」で考えず、翌日に再開できているか
よくある質問として「何歳から始めても意味があるのか」というものがありますが、答えは「何歳からでも遅すぎることはない」です。ガイド2023でも、高齢者に対して1日40分以上(約6,000歩以上)の身体活動と週2〜3日の筋トレが推奨されており、これまで運動してこなかった人が身体活動を増やした場合でも健康効果が期待できるとされています。また「忙しくてまとまった時間が取れない」という人こそ、本記事で紹介した10分単位の分割と生活活動の活用が向いています。
NGパターンの代表は、①初日から張り切りすぎて筋肉痛や疲労で挫折する、②「毎日やる」と決めて1日できなかっただけで全てやめてしまう、③体調不良や痛みを我慢して続ける、の3つです。運動は「継続してこそ」効果が出ます。また、持病がある方や運動中に胸の痛み・強い息切れなどの異常を感じた方は、自己判断で続けず医師に相談してください。
働く人の運動習慣づくりは、企業側の環境整備によっても大きく後押しできます。経団連や経済産業省が推進する健康経営の文脈でも、従業員の運動機会の提供は主要な取り組み項目のひとつです。具体的には、階段利用を促すサインの掲示、昼休みのウォーキンググループ、社内歩数イベント(チーム対抗のウォーキングラリー)、スタンディングミーティングの導入などは、低コストで始められて参加のハードルも低い施策です。個人の意志だけに頼らず「動くのが当たり前」の環境をつくることが、組織全体の生産性とエンゲージメント向上につながります。
効果を実感できるまでの目安も知っておきましょう。ウォーキングを始めて数週間で睡眠や気分の改善を感じる人は多く、体力(持久力)の向上は1〜3カ月、体組成の変化はおおむね3カ月以降に表れることが一般的です。体重や見た目の変化だけを指標にすると挫折しやすいため、「階段で息が切れなくなった」「寝つきが良くなった」といった小さな変化に目を向けることが継続のコツです。
Semuis株式会社では、健康経営や従業員のウェルビーイング向上に取り組む企業のマーケティング・情報発信もご支援しています。社内向け健康施策の広報や外部発信にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。
