教育訓練給付制度とは?給付率20%・50%・80%の違いと申請手順5ステップ【2026年版】
2026.10.07
- リスキリング
リスキリング(学び直し)を始めたいが、講座の受講料がネックになっている――そんな社会人にとって最も使いやすい公的支援が「教育訓練給付制度」です。雇用保険の給付制度のひとつで、条件を満たせば受講費用の20%から最大80%が国から支給されます。2024年10月の制度拡充で専門実践教育訓練の給付率が最大80%に引き上げられ、2025年10月には働きながら休暇を取って学ぶ人向けの「教育訓練休暇給付金」も新設されました。本記事では、3つの給付金の違いと申請手順を、企業の人事担当者・学び直したい個人の両方の視点から解説します。
※本記事の給付率・上限額等は執筆時点(2026年10月)の公開情報に基づく目安です。制度は改正されることがあるため、最新の内容は必ず厚生労働省・ハローワークの公式情報でご確認ください。
教育訓練給付制度とは?学び直し費用を国が支援する仕組み

教育訓練給付制度は、働く人の主体的な能力開発・キャリア形成を支援するため、厚生労働大臣が指定する講座を受講・修了した場合に、受講費用の一部を雇用保険から支給する制度です。対象講座は簿記・宅建・TOEICなどの定番資格から、看護師・介護福祉士などの業務独占資格、ITエンジニア養成講座や専門職大学院まで幅広く、指定講座は厚生労働省の「教育訓練給付制度 検索システム」で調べられます。
利用できるのは、原則として雇用保険の被保険者期間が一定以上ある在職者・離職者です。初めて利用する場合は被保険者期間1年以上(専門実践は2年以上)から対象になるため、「転職したばかりだから無理」と思い込まずに、まず要件を確認してみる価値があります。会社経由ではなく個人がハローワークに申請する制度なので、勤務先の承認は原則不要です。企業側が従業員の訓練費用を負担する場合の助成制度(人材開発支援助成金など)とは別の制度である点も押さえておきましょう。企業向けの助成金はリスキリングに使える助成金とは?事業展開等リスキリング支援コースの申請5ステップで解説しています。
3つの給付金の違い|一般20%・特定一般50%・専門実践80%

教育訓練給付金は、講座の種類によって3段階に分かれています。
・一般教育訓練給付金:受講費用の20%(上限10万円)。簿記、TOEIC、MOSなど、幅広い資格・スキル講座が対象です。
・特定一般教育訓練給付金:受講費用の40%(上限20万円)、資格取得等+就職で最大50%(上限25万円)。介護職員初任者研修、大型自動車免許、税理士など、速やかな再就職・キャリア形成に効果が高いとされる講座が対象です。
・専門実践教育訓練給付金:受講費用の50%(年間上限40万円)を基本に、資格取得+就職で+20%、さらに賃金が5%以上上昇した場合+10%で最大80%(年間上限64万円)。看護師・介護福祉士などの養成課程、専門職大学院、第四次産業革命スキル習得講座(AI・データサイエンス等のIT講座)などが対象で、最長3年間給付されます。
リスキリング文脈で特に注目したいのは、専門実践教育訓練に含まれる「第四次産業革命スキル習得講座(いわゆるReスキル講座)」です。経済産業大臣が認定したAI・データサイエンス・クラウド・セキュリティなどの実践的なIT講座が対象で、働きながら受講できる夜間・オンライン形式の講座も多く指定されています。文系出身の営業職がデータ分析を学ぶ、人事担当者がピープルアナリティクスを学ぶといった「職種×デジタル」の掛け合わせに使いやすい枠組みです。
試算例を挙げると、受講料60万円の専門実践指定のITエンジニア講座を修了し(30万円支給)、資格を取得して1年以内に就職すると追加12万円、さらに賃金が5%以上上がれば追加6万円で、合計48万円・実質負担12万円まで下がる計算です。※加算にはそれぞれ要件・申請期限があるため、個別の適用可否はハローワークで確認してください。
2025年10月開始の「教育訓練休暇給付金」とは

2025年10月には、新しい給付金として「教育訓練休暇給付金」が始まりました。これは、在職中の人が会社を辞めずに、30日以上連続する無給の教育訓練休暇を取得して学び直す場合に、失業給付(基本手当)と同様の計算方法で算出した給付金を受け取れる制度です。
主な要件は、(1)雇用保険の一般被保険者であること、(2)雇用保険の加入期間が通算5年以上あること、(3)休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること、(4)従業員本人の自発的な学び直しであること(業務命令による研修は対象外)などです。給付日数は加入期間に応じて設定され、受給には30日ごとにハローワークへの申告が必要とされています。
「受講費用の補助」である教育訓練給付金に対し、こちらは「学んでいる間の生活費の支え」という位置づけです。企業側には教育訓練休暇制度の就業規則への規定が必要になるため、人事担当者は自社の規程整備とセットで検討することになります。制度の詳細・最新の要件は、厚生労働省の公式情報と管轄のハローワークで必ず確認してください。
申請手順5ステップ|受講開始「前」の手続きが肝心

特定一般・専門実践教育訓練給付金は、受講開始後に思い立ってからでは間に合いません。次の5ステップで進めます。
ステップ1:講座と要件の確認。厚労省の検索システムで受けたい講座が指定されているかを調べ、ハローワークで支給要件照会を行います。
ステップ2:キャリアコンサルティングの受講。訓練対応キャリアコンサルタントによる面談を受け、ジョブ・カードを作成します(特定一般・専門実践で必要)。
ステップ3:受講開始2週間前までに受給資格確認。ハローワークに必要書類を提出し、受給資格の確認を受けます。この期限を過ぎると給付を受けられないため、ここが最大の注意点です。
ステップ4:受講・修了。出席率や修了認定基準を満たして講座を修了します。専門実践では6か月ごとの支給申請も可能です。
ステップ5:修了後1か月以内に支給申請。修了証明書・領収書等を添えてハローワークに申請します。資格取得+就職による追加給付は、要件を満たした後に別途申請します。
チェックリストとしては、「講座が指定講座か」「自分の被保険者期間が要件を満たすか」「受講開始2週間前までのスケジュールに余裕があるか」「修了認定基準(出席率・テスト)を満たせる学習時間を確保できるか」の4点を事前に確認しておきましょう。
なお、給付金は原則として「修了後の後払い」です(専門実践は6か月ごとの中間申請が可能)。受講料はいったん全額を自分で支払う必要があるため、手元資金の計画も忘れずに。講座によっては教育ローンや分割払いと併用するケースもありますが、給付対象になるのは実際に支払った入学料・受講料であり、交通費やパソコン購入費などは対象外です。
企業の人事担当者ができること|制度周知が採用・定着の武器になる

教育訓練給付は個人向けの制度ですが、企業にとっても活用価値があります。第一に、自己啓発支援の選択肢として社内に周知することで、会社の追加コストなしに従業員の学びを後押しできます。資格取得支援制度や書籍購入補助と並べて案内するだけでも、従業員の受講ハードルは大きく下がります。第二に、教育訓練休暇制度を就業規則に整備すれば、長期の学び直しを理由とした離職を防ぎ、「学べる会社」として採用広報にも活かせます。第三に、会社主導の人材育成には人材開発支援助成金や事業展開等リスキリング支援コースといった企業向け助成金を使い、個人の自主的な学びには教育訓練給付を案内する、という使い分けができると、育成投資の設計が立体的になります。
周知の具体策としては、社内ポータルや入社時オリエンテーションでの制度紹介に加えて、実際に給付を使って学んだ社員の体験談を社内報で共有する方法が効果的です。「申請が面倒そう」という心理的ハードルは、身近な利用者の声でしか下がりません。また、1on1や目標設定面談の場で上司が「この講座は教育訓練給付の対象ですよ」と紹介できるよう、管理職向けに制度の概要資料を配っておくのも有効です。
学び直しを組織に定着させるには、制度の案内だけでなく、上司や先輩が学びを支える仕組みづくりも重要です。社内の支援体制づくりはメンター制度とは?導入5ステップと厚労省マニュアルの活用法も参考にしてください。
Semuisでは、リスキリング支援事業として、企業の人材育成制度の設計から、助成金・給付金を踏まえた育成プランのご提案まで行っています。「自社の育成計画にどの制度を組み合わせるべきか」といったご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。
