【2026年度版】リスキリングに使える助成金とは?事業展開等リスキリング支援コースの申請5ステップ
2026.10.03
- リスキリング
生成AIの業務活用、EC・デジタルマーケティングへの事業転換、人手不足への対応——いま多くの企業で、社員が新しいスキルを学び直す「リスキリング」が経営課題になっています。しかし、研修には費用がかかります。そこで必ず押さえておきたいのが、国がリスキリング費用の最大75%を助成する人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」です。
本記事では、2026年度時点の制度内容(助成率・上限額・対象訓練)と、申請の流れを5ステップで解説します。助成金は要件や様式が頻繁に更新されるため、実際の申請にあたっては必ず厚生労働省の最新の公式情報・管轄労働局で確認してください。
なぜ今リスキリングなのか——制度が後押しする学び直し

リスキリングとは、事業環境の変化に対応するために、業務で必要となる新しい知識・スキルを習得する(させる)ことです。DX(デジタル化)やGX(脱炭素化)の進展で、「今の業務の延長線上にないスキル」が必要になる場面が急増しており、政府も「人への投資」として5年間で1兆円規模の施策パッケージを掲げ、個人・企業の学び直しを後押ししています。
企業にとってリスキリングは、採用難の時代に外部から人材を獲得する代わりに、社内の人材で新しい事業・業務に対応するための現実的な打ち手です。たとえば「営業担当者が生成AIを使った提案書作成を習得する」「EC事業の立ち上げに合わせて担当者がWebマーケティングを学ぶ」といった取り組みは、まさに助成金の対象になり得る典型例です。
とはいえ、外部研修やeラーニングにはまとまった費用がかかります。そこで活用したいのが、雇用保険料を財源とする「人材開発支援助成金」です。中でも事業展開等リスキリング支援コースは助成率が高く、リスキリング目的の研修と相性の良いコースです。
事業展開等リスキリング支援コースとは?最大75%を助成

事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業への進出(事業展開)や、DX・GXに対応するために必要な専門知識・スキルを社員に習得させる訓練費用を助成する制度です。対象になるのは、実訓練時間10時間以上のOFF-JT(通常業務と切り離した座学・実習・eラーニング等)で、大きく次の3類型があります。
- 事業展開型:新しい分野・業態への進出に必要な知識・技能の習得(例:製造業がEC販売を始めるためのEC運営研修)
- DX化型:デジタル化に対応するための知識・技能(例:生成AIを使った実務研修、データ分析研修)
- GX化型:カーボンニュートラル化に対応するための知識・技能
なお、助成率・上限額が優遇される「中小企業」の範囲は業種ごとに資本金・従業員数で定義されています(例:小売業は資本金5,000万円以下または常用労働者50人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または100人以下、製造業その他は資本金3億円以下または300人以下)。自社がどちらに該当するかを最初に確認しておきましょう。
助成内容は、研修費用に対する「経費助成」と、訓練時間中の賃金に対する「賃金助成」の2本立てです。中小企業の場合、経費の75%(大企業60%)、賃金は1人1時間あたり1,000円(大企業500円)が助成されます。社員1人に30万円の外部研修を受けさせた場合、中小企業なら経費助成だけで22万5,000円が戻ってくる計算で、実質負担は大きく下がります。
助成率・上限額と対象訓練の要件

経費助成の上限額は、訓練時間と企業規模によって次のように設定されています(1人1訓練あたり)。
| 実訓練時間 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
| eラーニング・通信制(時間数不問) | 15万円 | 10万円 |
対象訓練の具体例としては、EC事業立ち上げに伴う「ECサイト運営・Webマーケティング実務研修」、営業部門の「生成AIを活用した提案書・メール作成の実務研修」、バックオフィスの「データ分析・BIツール活用研修」、製造現場の「省エネ設備運用・GX関連研修」などが挙げられます。ポイントは、受講する社員の職務と訓練内容が直接つながっていること、そして会社としての事業展開・DX・GXの計画と紐づいていることです。
1事業所が1年度に受給できる上限は1億円と大きく、複数人・複数訓練での活用も可能です。対象経費は外部研修の受講料や講師謝金などで、対象訓練は「職務に直接必要な専門的スキル」であることが求められます。なお、2026年8月の改正で、「DXの概念理解」や「汎用的なプロンプトの作り方」のような間接的・汎用的な内容は対象外とされ、同一労働者の受講は年度3回まで(うちeラーニングは年度1回まで)という回数制限も設けられました。実務に直結する訓練設計がこれまで以上に重要になっています。
申請の流れ5ステップ——計画届は訓練開始の1カ月前まで

申請の基本的な流れは次の5ステップです。
- 訓練計画を立てる:どの社員に、どんな訓練を、何時間受けさせるかを決め、事業展開・DX・GXとの関連を整理します。研修会社のコースを使う場合は、助成金対応の実績があるかも確認すると進めやすくなります。
- 計画届を提出する:訓練開始日の6カ月前から1カ月前までに、管轄の労働局へ訓練計画届と添付書類(事業展開等の実施計画など)を提出します。訓練開始後の後出し申請はできないため、ここが最大の注意点です。
- 訓練を実施する:計画に沿って訓練を実施し、出席記録・経費の支払い記録(領収書・振込記録)を確実に残します。
- 支給申請する:訓練終了日の翌日から2カ月以内に、支給申請書と実績書類を労働局へ提出します。
- 審査・支給:審査を経て助成金が支給されます。申請内容と実績の食い違い(出席率不足、経費の相違など)は不支給の原因になるため、実施中の記録管理が重要です。
金額のイメージを持つために簡単な試算をしてみましょう。中小企業が社員5人に、1人あたり受講料10万円・20時間のDX実務研修(集合研修)を受けさせた場合——経費助成は10万円×75%×5人=37万5,000円、賃金助成は1,000円×20時間×5人=10万円で、合計47万5,000円が助成される計算です(上限内・要件充足を前提とした概算)。総費用50万円の研修の実質負担が数万円まで下がる可能性があるわけで、使わない手はない制度と言えます。
社内に申請ノウハウがない場合は、社会保険労務士など専門家への相談も選択肢です。その場合も、制度の最新要件は厚生労働省のパンフレット・支給要領で必ず確認しましょう。
活用のコツと注意点——2027年3月末までの時限措置

このコースは2027年3月31日(令和8年度末)までの時限措置とされており、活用を検討するなら残り期間から逆算した計画が必要です。計画届の提出期限(訓練開始1カ月前)を考えると、実質的な準備期限はさらに手前になります。
活用のコツは、単発の研修で終わらせず、事業計画とセットで設計することです。「新規事業のためにどの部署の誰が、いつまでに何をできるようになる必要があるか」を人材育成計画として整理すると、助成金の要件適合性が高まるだけでなく、研修の社内定着も進みます。研修後に学びを実務に落とし込む仕組みとして、メンター制度やOJTとの組み合わせも有効です(メンター制度とは参照)。また、リスキリングのテーマがEC・デジタル販売の立ち上げであれば、設備・システム側の補助金(ECサイト構築・運営に使える補助金とは)との併用検討も価値があります。
このコース以外にも、リスキリングに使える公的支援はあります。企業向けでは人材開発支援助成金の他コース(人材育成支援コース、人への投資促進コースなど)、個人向けでは教育訓練給付金や「教育訓練休暇給付金」、東京都など自治体独自のDXリスキリング助成金もあります。自社の訓練内容・対象者によって最適な制度は変わるため、「どの制度が使えるか」を最初に広く確認してから研修を設計すると取りこぼしを防げます。
注意点としては、助成金は「後払い」である(研修費用はいったん全額自社で立て替える)こと、要件・様式が年度途中でも変わり得ること、不正受給には厳しいペナルティがあることを押さえておきましょう。
リスキリングは「いつかやる」と先送りされがちですが、この助成金には2027年3月末という明確な期限があります。来期の事業計画と人材育成をセットで考え、対象になりそうな研修があるなら、まず管轄労働局や専門家に計画届の相談をするところから始めてみてください。早く動くほど、制度を複数回活用できる余地も広がります。
Semuis株式会社では、リスキリング支援事業として、マーケティング・EC・セールス領域の実務スキル育成プログラムの提供や、企業の人材育成計画づくりを支援しています。「助成金を活用して社員のデジタルスキルを底上げしたい」「EC・マーケ人材を社内で育てたい」といったご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。
