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勤務間インターバル制度とは?導入率6.9%の現状と中小企業の導入5ステップ

2026.09.29

  • ウェルビーイング

終業が深夜に及んだ翌朝も、定時に出社——こうした働き方を防ぐ仕組みが「勤務間インターバル制度」です。終業から次の始業までに一定の休息時間を確保するこの制度は、2019年から企業の努力義務となっていますが、厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると導入企業はわずか6.9%にとどまります。一方で、国は導入率の引き上げを目標に掲げ、義務化に向けた検討も始まっており、「知らなかった」では済まされない制度になりつつあります。本記事では、制度の基本と最新データ、義務化をめぐる動き、そして中小企業でも実践できる導入5ステップを解説します。

勤務間インターバル制度とは?仕組みと法的位置づけ

勤務間インターバル制度とは?導入率6.9%の現状と中小企業の導入5ステップ

勤務間インターバル制度とは、勤務終了後から翌日の始業までの間に、一定時間以上の「休息時間(インターバル)」を確保する仕組みです。例えば「11時間」のインターバルを設定した場合、深夜0時まで残業した従業員の翌日の勤務開始は11時以降となります(始業時刻を繰り下げる、または繰り下げ分を勤務したものとみなす等の運用があります)。

この制度は、働き方改革関連法により2019年4月から労働時間等設定改善法上の「努力義務」とされています。罰則はありませんが、すべての企業が導入に努めるべき制度という位置づけです。EUでは24時間につき連続11時間の休息が義務とされており、日本でも11時間を一つの目安とする議論が多く見られます。

数字でイメージしてみましょう。仮にインターバルが11時間で、通勤に片道1時間かかる人が深夜0時まで働いた場合、帰宅は1時前後、翌日の始業は11時ですから、身支度と通勤を差し引いても7時間前後の睡眠を確保できる計算になります。インターバルがなければ、同じ人が9時始業に間に合わせるには睡眠を5時間程度まで削るしかありません。制度の有無は、そのまま睡眠時間の差になって表れるのです。

制度の目的はシンプルで、睡眠時間と生活時間の確保です。どれだけ繁忙でも「休息の下限」を制度として保証することで、疲労の蓄積や健康障害を防ぎます。睡眠が心身の健康や日中のパフォーマンスの土台であることは広く知られており(睡眠の質を高める10の習慣参照)、勤務間インターバルは「会社として従業員の睡眠時間を守る仕組み」と言い換えることもできます。

データで見る現状|導入率6.9%と国の目標

勤務間インターバル制度とは?導入率6.9%の現状と中小企業の導入5ステップ

厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度の導入状況は次の通りです。

  • 導入している:6.9%
  • 導入を予定又は検討している:13.8%
  • 導入予定はなく、検討もしていない:78.7%

企業規模別では、1,000人以上の企業で20.1%、300〜999人で9.6%、100〜299人で7.5%、30〜99人で6.1%と、規模が小さいほど導入が進んでいません。導入済み企業における休息時間の平均は10時間51分です。注目すべきは未導入の理由で、「超過勤務の機会が少なく必要性を感じない」が57.3%を占める一方、「制度を知らなかった」という企業も15.7%あります。

国は過労死等防止対策大綱で勤務間インターバル制度の導入率の目標(15%以上)を掲げており、現状とは大きな開きがあります。さらに、厚生労働省の審議会では制度の義務化に向けた検討も始まったと報じられており、今後、努力義務から一歩進む可能性があります。検討状況は流動的なため、最新の公式情報を確認してください。あわせて、中小企業には導入を後押しする助成金(働き方改革推進支援助成金の勤務間インターバル導入コース)が用意されており、就業規則の整備や勤怠システム導入の費用に活用できます。要件・金額は年度で変わるため、こちらも最新の公募要領で確認しましょう。

なお、働き方改革全体の文脈で見ると、同じ調査では年次有給休暇の取得率が66.9%(令和6年)と過去最高水準に達するなど、「休み方」の改善は着実に進んでいます。その中で勤務間インターバルの導入率だけが1桁台にとどまっているのは、制度の認知不足と「うちには必要ない」という思い込みが背景にあると考えられます。実際には、繁忙期だけ深夜対応が集中する部署や、障害対応のあるIT・保守部門など、平常時は問題がなくても「守られるべき下限」が必要な職場は少なくありません。

導入のメリット|健康確保だけではない3つの効果

勤務間インターバル制度とは?導入率6.9%の現状と中小企業の導入5ステップ
  • 健康リスクと労務リスクの低減:長時間労働による健康障害の防止は、企業の安全配慮義務に直結します。休息の下限を制度化することは、過重労働リスクを構造的に減らす打ち手です。メンタルヘルス対策の強化(ストレスチェックの対象拡大など)が進む中、その土台としても機能します(ストレスチェック制度の解説記事参照)。
  • 生産性と定着率への好影響:十分な休息は翌日の集中力・判断力の前提条件です。また「休息が制度で守られている会社」であることは、採用市場でのアピールや離職防止の材料になります。健康経営の取り組み(健康経営の始め方5ステップ)とも相性がよく、健康経営優良法人の認定項目とも関連します。
  • 働き方の見える化が進む:インターバルを守るには終業・始業時刻の正確な把握が不可欠です。導入の過程で勤怠管理が整い、長時間労働の偏りや業務配分の問題が可視化される副次効果があります。

中小企業のための導入5ステップ

勤務間インターバル制度とは?導入率6.9%の現状と中小企業の導入5ステップ

ステップ1:勤務実態を把握する
まず直近数カ月の勤怠データで、終業から始業までの間隔が短いケースがどの部署・時期にどれだけあるかを洗い出します。「実はほとんど発生していない」と分かれば、導入のハードルは一気に下がります。

ステップ2:休息時間数と適用範囲を決める
9〜11時間の範囲で自社の実態に合う時間数を設定するのが一般的です。最初は9時間から始めて段階的に延ばす、特定部署から試行する、といった現実的な設計で構いません。災害対応など適用除外とする例外も定めておきます。

ステップ3:インターバル確保時の取り扱いを決める
翌日の始業を繰り下げた場合の賃金・勤務時間の扱い(繰り下げ分を勤務とみなす等)を決め、就業規則に規定します。厚生労働省が業種別の導入・運用マニュアルを公開しているので、ひな形として活用できます。

ステップ4:勤怠システムでアラートを仕組み化する
インターバル不足を人の注意力で防ぐのは困難です。勤怠管理システムのアラート機能などで、違反が起きそうな勤務を事前に検知できるようにします。助成金はこうしたシステム導入費にも使える場合があります。

運用イメージとして、導入企業でよく見られる形は「原則11時間、当面は9時間からスタートし、違反時は翌日の始業を繰り下げ、繰り下げた時間分は勤務したものとみなす」というものです。みなし扱いにすれば従業員の賃金が減らないため納得を得やすく、管理側も運用がシンプルになります。

ステップ5:試行→本格導入→定期見直し
数カ月の試行期間で運用上の問題(シフト調整、顧客対応の引き継ぎ等)を洗い出してから本格導入します。導入後も、インターバル違反の発生件数を定期的にモニタリングし、休息時間数の延長や業務配分の見直しにつなげましょう。

導入前チェックリスト

勤務間インターバル制度とは?導入率6.9%の現状と中小企業の導入5ステップ

導入検討時によく出る疑問にも触れておきます。「管理職はどう扱うか」——労働時間規制の適用が異なる管理監督者も、健康確保の観点では対象に含める設計が望ましいとされます。「テレワークではどう数えるか」——在宅勤務でも終業・始業の記録に基づいて同じルールを適用するのが基本で、深夜のメール対応が常態化しているなら、そもそもの連絡ルール(勤務時間外の連絡を控える等)とセットで整備すると実効性が上がります。「シフト制の職場では無理では」——シフト作成時にインターバルを組み込めば、むしろシフト制の方が管理しやすい面もあります。

  • □ 勤怠データで終業〜始業間隔の実態を把握したか
  • □ 休息時間数(9〜11時間目安)と適用範囲・例外を決めたか
  • □ 始業繰り下げ時の賃金・勤務の取り扱いを決めたか
  • □ 就業規則への規定と従業員への周知を計画したか
  • □ 勤怠システムでの検知・アラートを用意したか
  • □ 助成金の最新要件を公式情報で確認したか
  • □ 試行期間と見直しのタイミングを決めたか

導入企業の声としてよく聞かれるのは、「制度を入れたことで、深夜まで働かせない前提で仕事を組む文化ができた」という変化です。インターバルは個人の頑張りを制限する制度ではなく、業務量や納期設定といったマネジメント側の問題を放置できなくする仕組みでもあります。だからこそ、制度導入と同時に、業務の平準化や属人化の解消といった根本対策に着手することが成功の条件になります。

勤務間インターバルは、大企業だけの制度ではありません。むしろ一人の長期離脱が痛手になる中小企業にこそ、「休息の下限を守る仕組み」の価値があります。義務化の議論が本格化する前に、自社の実態把握から始めてみてください。

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