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メンター制度の運用ルール・規程の作り方とは?決めるべき項目を解説

2026.09.18

  • BtoBマーケティング

メンター制度がうまく回らない企業には、共通した特徴があります。それは「誰が、いつ、何を、どこまでやるのか」が文書になっていないことです。制度の理念だけを掲げて現場に投げてしまうと、メンターは手探りで動くことになり、メンティーは何を相談してよいのかわからないまま時間が過ぎていきます。本記事では、メンター制度の運用ルール・規程に盛り込むべき項目と、ひな形としての構成、そして運用開始後の見直しサイクルまでを、人事・総務の実務担当者向けに整理します。

なぜメンター制度のルールを明文化する必要があるのか

厚生労働省の「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」(平成25年4月、女性社員の活躍推進のためのポジティブ・アクション展開事業)では、制度導入のプロセスを①目的の明確化 ②ルール・運用体制の構築 ③メンターの選出・育成 ④制度の実施 ⑤面談実施と改善の反復、という5つのステップで整理しています。ルールづくりは2番目、つまり人選よりも前に位置づけられています。制度の器を先につくり、そこに人を配置するという順序が示されているわけです。詳しい流れはメンター制度とは?導入5ステップで解説しています。

明文化が必要な理由は4つあります。第一に、運用の属人化を防ぐためです。立ち上げを主導した担当者が異動すると、口頭で共有されていた前提は失われます。「面談は業務時間内でよかったはずだ」「記録はどこに出すのだったか」といった確認コストが積み重なり、やがて制度そのものが止まります。

第二に、参加者の不安を減らすためです。メンターに任命された社員の多くは、自分の通常業務に加えて役割が増えることに戸惑いを感じています。「月1回30分程度」「記録は所定のフォーマットに5分で書ける範囲」と具体的な負荷が示されていれば、引き受ける心理的ハードルは大きく下がります。メンティー側も、相談してよい範囲が明示されていれば遠慮なく話せます。

第三に、労務上のトラブルを避けるためです。面談を業務として扱うのか、時間外に行う場合の勤怠はどうするのか、社外で実施したときの飲食費は誰が負担するのか。これらを曖昧にしたまま運用すると、後になって処理に困る事案が発生します。第四に、守秘義務を担保するためです。「話した内容は口外しない」という前提は、文書化されて初めて組織としての約束になります。日本メンター協会の「メンター制度導入実態調査」(2022年9月実施、有効回答500件)では、導入目的の2位に「メンタルヘルス対策」が挙げられています。心身の状態という繊細な情報を扱う以上、取り扱いルールは不可欠です。

規程に盛り込むべき10項目

規程に必要な項目は、次の10点に整理できます。自社の状況に応じて取捨選択しつつ、少なくともこの範囲は検討しておきましょう。

1. 目的。何のための制度かを一文で示します。日本メンター協会の前述の調査では、導入目的の1位が「職場のコミュニケーション活性化」でした。定着促進なのか、女性活躍推進なのか、早期離職の抑制なのかによって、その後の設計はすべて変わります。

2. 対象者。メンティーの範囲(新入社員のみか、中途入社者や異動者も含むか)と、メンターの要件(入社年次、職位、所属部署の制限、直属の上司を除外するか)を定めます。メンターに求められる資質については、良いメンターの特徴7つ・心構えもあわせてご確認ください。人選の基準を規程本体に細かく書き込むか、運用ガイド側に委ねるかは、自社の組織規模に応じて判断してください。

3. 期間。1組あたりの標準期間を定めます。入社後1年間、あるいは半年間といった区切りが一般的ですが、延長の可否と手続きも書いておきます。4. 頻度と1回あたりの時間。月1回30〜60分などの標準を示し、繁忙期の扱いや、最低実施回数の目安も添えておくと運用が安定します。

5. 実施時間の扱い。業務時間内に実施するのか、時間外の場合は労働時間として扱うのかを明記します。ここは曖昧にしてはいけない項目の筆頭です。6. 費用負担。社外で実施する場合の飲食費、オンライン環境の費用、研修費用について、上限額と精算方法を定めます。

7. 守秘義務。面談内容の取り扱い範囲、共有が許容される例外(本人の同意がある場合、心身の安全に関わる場合など)、違反時の扱いを定めます。8. 報告ライン。誰に何をいつ提出するのか、記録に含める項目は何かを指定します。相談内容そのものではなく、実施日・テーマの区分・次回予定といった事務項目に絞るのが実務的です。

9. 相談窓口。ペア内で解決できない問題が起きたときの受け皿を、人事部門やダイバーシティ推進担当など具体的な部署名で示します。10. 交代・終了の条件。相性が合わない、異動や休職が発生した、目的を達成したといった場合に、誰の判断でどう手続きするかを定めます。交代の申し出が「不適応の告白」にならないよう、双方から匿名で申し出られる経路を用意しておくと、制度への信頼が保たれます。

メンター制度規程の構成:条立てのひな形

実際に文書へ落とし込む際は、就業規則の下位規程として整えると社内の承認プロセスに乗せやすくなります。おおよそ次のような条立てが標準的です。

  1. 第1条(目的):制度の狙いと、どの人事方針に紐づくかを記載
  2. 第2条(定義):メンター、メンティー、事務局の定義を明確化
  3. 第3条(適用範囲):対象となる社員区分と、対象外の扱い
  4. 第4条(実施期間):標準期間、開始時期、延長・短縮の手続き
  5. 第5条(面談の実施):頻度、時間、場所、オンラインの可否、勤怠上の扱い
  6. 第6条(メンターの役割と選任):役割、要件、任命方法、任期
  7. 第7条(研修):メンターに実施する事前研修とフォロー研修
  8. 第8条(費用):会社負担の範囲、上限、精算方法
  9. 第9条(守秘義務):対象情報、例外、退任後の取り扱い
  10. 第10条(報告):記録の様式、提出先、提出時期、保管期間
  11. 第11条(相談・苦情窓口):担当部署、申出の方法
  12. 第12条(変更・中止):ペアの交代、制度の中断、終了の手続き
  13. 附則:施行日、改定履歴

加えて、規程本体とは別に運用ガイドを用意することを強くおすすめします。規程は「守るべき最低限のルール」を定めるものであり、実際に現場が知りたいのは「初回は何を話せばよいか」「記録には何を書けばよいか」といった実務の手順だからです。規程だけを配布しても行動には変わらず、ガイドだけを配布しても労務上の根拠が残りません。両方をセットで整えてください。ガイドに載せる面談の進め方は、メンター面談のやり方・話すこと・NG行動が参考になります。

分量は、規程本体でA4用紙2〜3枚、運用ガイドで4〜6枚程度が目安です。長大な文書は読まれません。初版は簡潔にまとめ、運用しながら必要な条項を足していく進め方のほうが、結果として実態に合った規程になります。

運用開始後の見直しサイクルをどう回すか

規程は作って終わりではありません。厚生労働省マニュアルの5ステップ目が「面談実施と改善の反復」とされているように、運用しながら実態に合わせて調整していく前提で設計します。見直しの周期は、年1回の定期改定を基本に、半期ごとの中間チェックを挟む形が扱いやすいでしょう。

チェックすべき観点は4つあります。実施状況では、予定どおり面談が行われているペアの割合、未実施が続いているペアの有無を確認します。負荷の実態では、メンターが実際に使っている時間、複数のメンティーを抱えていないか、通常業務との両立ができているかを見ます。内容の傾向では、扱われているテーマが業務指導に偏っていないか、キャリアや職場適応の話ができているかを確認します。当事者の受け止めでは、メンター・メンティー双方に短いアンケートを実施し、続けたいか、困っていることは何かを聞きます。

アンケートは匿名で、設問は5問以内に絞るのが継続のコツです。設問数を増やすほど回答率は下がり、翌期の実施が見送られやすくなります。「制度は役に立っているか」「面談の頻度は適切か」「相談しにくいテーマはあるか」「規程で分かりにくい点はあるか」「継続を希望するか」といった構成で十分です。

見直しの際に見落とされがちなのが、規程と実態のずれです。たとえば「月1回」と定めているのに実際には四半期に1回しか行われていない場合、督促して規程どおりに戻すのか、実態に合わせて頻度を改めるのか、どちらが自社にとって適切かを判断する必要があります。回数を守らせること自体が目的化すると、内容の伴わない短時間の面談が形式的に積み上がるだけになります。同様に、記録の提出率が低い場合は、担当者の意識ではなくフォーマットの重さを疑ってください。記入に15分かかる様式は続きません。

集まった情報をもとに改定する際は、変更点と理由をセットで社内に共有することを忘れないでください。「現場の声を受けて、面談は業務時間内での実施を原則としました」というように背景まで伝えると、制度が一方的な押しつけではなく、育てていくものだという認識が組織に広がります。逆に、実施率の低さだけを理由に督促を強めると、形だけの面談報告が増え、制度は数字の上でだけ機能しているように見える状態に陥ります。改定の目的は管理の強化ではなく、続けやすさの改善だと捉えてください。

まとめ:規程は「最低限」、ガイドは「具体的」に

メンター制度の運用ルールづくりの要点を整理します。まず、ルールの明文化は人選よりも前に取り組むべき工程であり、属人化の防止、参加者の不安の軽減、労務トラブルの回避、守秘義務の担保という4つの効果があります。次に、規程に盛り込む項目は、目的、対象者、期間、頻度と時間、実施時間の扱い、費用負担、守秘義務、報告ライン、相談窓口、交代・終了の条件という10点を基本とします。文書としては、労務上の根拠を定める規程本体と、現場の手順を示す運用ガイドを分けて整備するのが実務的です。そして、年1回の定期改定を前提に、実施状況・負荷・内容の傾向・当事者の受け止めという4観点で見直しを続けます。

日本メンター協会の調査では、導入効果について7〜4(普通以上)と回答した担当者が88.2%に達しています。制度自体には十分な手応えがある一方、その成否は運用の設計に左右されます。メンターという役割の位置づけから確認したい場合は、メンターの基礎知識もあわせてご覧ください。まずは自社の現状に合わせて、A4で2〜3枚の初版を作るところから始めてみてください。

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