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メンター制度が「意味ない」と言われる理由とは?失敗の原因と対策を解説

2026.09.18

  • BtoBマーケティング

メンター制度を導入したものの、「面談が雑談で終わっている」「メンターが疲弊している」といった声が上がり、意味がないのではないかと社内で言われ始めるケースは珍しくありません。ただし、その原因の多くは制度そのものではなく、設計と運用の細部にあります。

本記事では、制度が形骸化する典型的な理由を6つに整理し、それぞれの原因分析と具体的な対策、止まった制度を立て直す手順、そして廃止を判断すべき基準までを解説します。制度の見直しを任された人事担当者の方が、次の一手を決めるための材料としてお使いください。

「意味ない」という評価が生まれる背景を正しく捉える

まず押さえておきたいのは、メンター制度そのものの評価は決して低くないという事実です。日本メンター協会「メンター制度導入実態調査」(2022年9月実施、有効回答500件)では、導入効果について7〜4(普通以上)と回答した担当者が88.2%にのぼりました。同調査では導入目的の1位が「職場のコミュニケーション活性化」、2位が「メンタルヘルス対策」とされ、社員の定着促進策として有効なものの2位に「メンターとの定期的な対話」が挙げられています。つまり、仕組みの有効性は一定程度認められており、問題が起きているとすれば運用側にあると考えるのが妥当です。

もう一つ重要なのが、評価するタイミングです。メンタリングは「初期・深化・解消」の3段階で進むとされており、初期は関係づくりと期待値のすり合わせに時間を使う段階です。この時期の面談は外から見れば雑談に近く、成果が見えにくいのが自然な姿です。開始から2〜3か月で「効果が出ていない」と判断してしまうと、本来これから深化する関係を早々に打ち切ることになりかねません。メンタリングの進み方の基本はメンターの基礎知識で整理していますので、評価軸を定める前に前提を揃えておくことをおすすめします。

また、「意味ない」という言葉は、多くの場合メンティーではなくメンター側や周囲の管理職から出てきます。負担感が語られているのか、成果の不足が語られているのかで打ち手はまったく異なります。声を集める段階で、誰が何について不満を持っているのかを切り分けておくことが、立て直しの出発点になります。

形骸化を招く6つの典型的な原因

実務でよく見られる失敗要因は、おおむね次の6つに整理できます。自社の状況と照らし合わせながら確認してください。

  • 目的が曖昧:何のための制度かが共有されておらず、面談の目標が人によってばらばらになる
  • 人選のミス:業務成績だけでメンターを選び、対話の適性や本人の意欲が考慮されていない
  • メンターの負担過多:通常業務に上乗せされ、面談時間の確保が個人の努力に委ねられている
  • メンターのスキル不足:傾聴や質問の訓練がなく、助言や指導に偏った面談になってしまう
  • 相性のミスマッチ:ペアの組み合わせが合わず、双方が気を遣うだけの時間になっている
  • 放置運用と上司の非協力:事務局が実施状況を把握しておらず、現場の上司も活動を業務と認めていない

この6つは独立して起きるのではなく、連鎖する点に注意が必要です。目的が曖昧だとメンターに何を求めるかが定まらず、その結果として人選の基準も作れません。基準がないまま「面倒見が良さそうな人」を指名すれば、適性のばらつきがそのまま面談の質のばらつきになります。さらに研修がなければメンターは自分の経験談を話すしかなくなり、メンティーからは「説教の時間」と受け取られる。こうして最初のボタンの掛け違いが、最終的な「意味ない」という評価に行き着きます。

加えて見落とされやすいのが、上司の非協力です。メンター本人にやる気があっても、直属の上司が面談時間を業務外と見なしていれば、繁忙期に真っ先に削られます。制度は現場の時間の使い方を変える施策であり、当事者だけでなくその上長を巻き込めているかどうかが継続性を左右します。

形骸化は、ある日突然起きるものではありません。面談の日程調整が毎回後ろ倒しになる、記録の提出が滞る、面談時間が予定の半分で終わるようになる、といった小さな兆候が先に表れます。事務局がこうしたサインを拾えていれば、ペアの組み替えや負担の調整で立て直せる段階で手を打てます。反対に、年度末のアンケートで初めて実態を知るという運用では、手当てのタイミングを逃してしまいます。実施状況の可視化は、制度を評価するためではなく、早い段階で支援するために行うものだと位置づけ直すことが大切です。

原因別に打つべき具体的な対策

原因が特定できたら、対策は絞り込めます。厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」(平成25年4月、女性社員の活躍推進のためのポジティブ・アクション展開事業)が示す導入5ステップ、すなわち①目的の明確化 ②ルール・運用体制の構築 ③メンターの選出・育成 ④制度の実施 ⑤面談実施と改善の反復に沿って、抜けている工程を埋めていく進め方が確実です。

目的が曖昧な場合は、「入社3年目までの早期離職を減らす」「若手が中長期のキャリアを描ける状態をつくる」といった、一文で言い切れる粒度まで書き直します。あわせて、メンターに期待する行動を3つ程度に限定して明文化すると、面談の焦点が定まります。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒)では大卒の3年以内離職率が33.8%、高卒が37.9%となっており、定着を目的に据える場合はこうした外部指標を判断の背景として共有しておくと、社内の合意形成が進みやすくなります。

人選と相性の問題には、選定基準の明文化と交代ルールの整備で対応します。業務成績ではなく、傾聴の姿勢、守秘義務を守れること、本人の意欲を基準に据え、直属の上下関係を避けた斜めの関係で組むのが原則です。具体的な基準づくりはメンターの選び方・人選基準を参考にしてください。あわせて、開始から一定期間後に無記名で継続希望を確認し、希望があれば理由を問わず交代できる仕組みを用意しておくと、ミスマッチが固定化しません。

負担過多とスキル不足には、業務としての位置づけと研修の2つで手を打ちます。面談時間を就業時間内に確保し、メンターの評価や目標設定に活動を反映させ、1人が担当するメンティーは原則1名までとする。そのうえで、傾聴と質問の基本、守秘義務の範囲、踏み込んではいけない領域を事前に学ぶ機会を設けます。研修の具体的な設計はメンター研修の内容・設計で解説しています。放置運用に対しては、事務局が実施率を毎月確認し、未実施のペアには事務局から声をかける運用を定着させることが有効です。

上司の非協力については、メンター本人ではなく上長に向けた説明の機会を別に設けるのが確実です。制度の目的、活動にかかる時間の実際の目安、上長に期待する協力内容の3点を、部門長会議などの既存の場で短く共有します。あわせて、メンターの目標設定にこの活動を明示的に位置づけておくと、評価の場面でも会社としての姿勢が伝わります。現場の理解が得られないまま人事部門だけが旗を振る状態は、担当者の疲弊を招くだけで長続きしません。

止まった制度の立て直し手順と廃止を判断する基準

すでに制度が止まりかけている場合は、いきなり全体を作り直すのではなく、順を追って範囲を絞りながら再起動するのが現実的です。

  1. 現状を把握する。直近半年の面談実施率、ペアごとの継続状況、メンターとメンティー双方への無記名アンケートを集め、不満の中身を「負担」「目的不明」「相性」に分類します。
  2. 目的を1つに絞り直す。複数の狙いを並べている場合は主目的を1つに決め、残りは副次効果として扱います。
  3. ルールを一枚にまとめる。対象、期間、頻度、1回の時間、場所、守秘義務の範囲、事務局の連絡先を明文化し、全員に再配布します。
  4. メンターを再選定し、研修を実施する。続投の意思を確認したうえで、基準に合う人に入れ替えます。
  5. 対象を限定して再スタートする。全社ではなく特定の部署や入社年次に絞り、3か月ごとに実施率と当事者の声を確認して調整します。

それでも改善しない場合、廃止も選択肢になります。判断の目安としては、目的を明確にし研修と支援体制を整えたうえで1年程度運用しても実施率が低いままである、メンティー側から継続希望がほとんど出ない、制度が担っていた役割を1on1やOJTなど他の仕組みが十分に果たしている、という状態が重なるときです。特に、上司との1on1が定着し、そこで中長期のキャリアまで扱えているのであれば、役割の重複を整理する意味で縮小する判断は合理的です。

一方で、目的も研修も支援体制も整えないまま「効果がないから廃止」と結論づけるのは早計です。制度の骨格が揃っていない状態での評価は、施策の良し悪しではなく準備不足を測っているにすぎません。廃止を検討する前に、導入の5ステップのうちどこが抜けていたのかを一度点検してください。制度設計の全体像はメンター制度とは?導入5ステップで確認できます。

まとめ:原因は制度ではなく運用の細部にある

メンター制度が「意味ない」と言われるとき、その背景にあるのは目的の曖昧さ、人選の基準不在、メンターの負担過多とスキル不足、相性のミスマッチ、放置運用と上司の非協力という、いずれも運用上の課題です。これらは連鎖して起きるため、どこか一点だけを直しても効果が出にくく、目的の明確化から順に工程を埋め直す必要があります。

調査上は導入効果を普通以上と評価する担当者が88.2%にのぼる一方で、実感を得られるかどうかは運用の丁寧さに左右されます。評価を下すのは、目的を絞り、研修を用意し、活動を業務として支える体制を整えてからでも遅くありません。そのうえでなお機能しないのであれば、他の仕組みとの役割分担を見直し、縮小や廃止を判断する段階に進みます。

Semuis株式会社では、BtoB企業のマーケティング・セールス組織における育成の仕組みづくりを支援しています。止まってしまった制度の現状診断から、目的の再設定、運用ルールの整備、メンター育成まで、実態に即した立て直しをご一緒します。制度の見直しをご検討の際は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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