リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは?受講料最大70%(上限56万円)補助の仕組みと利用手順5ステップ【2026年版】
2026.10.09
- リスキリング
「学び直して年収を上げたいが、講座の受講料が高くて踏み切れない」。そんな在職者に向けて、経済産業省が実施しているのが「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」(通称:リスキリング補助金)です。キャリア相談・講座受講・転職支援を一体で受けられ、条件を満たせば受講料の最大70%(上限56万円)が補助されます。本記事では、制度の仕組み・対象者・利用手順・注意点を、経済産業省および事務局の公開情報に基づいて解説します。制度の内容や公募状況は変わる可能性があるため、最新情報は必ず公式ポータル・各補助事業者の案内でご確認ください。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは?制度の全体像

本事業は、在職者のリスキリングと転職による賃金上昇を後押しするために、令和5年度(2023年度)に始まった経済産業省の事業です。国が採択した民間の「補助事業者」(人材会社・教育事業者など)が窓口となり、次の3つのサービスを一体で提供します。
- キャリア相談:民間の専門家に無料でキャリアプランを相談できる
- リスキリング講座の受講:相談結果を踏まえ、対象講座を補助価格で受講できる
- 転職支援:講座修了後の転職相談・職業紹介を無料で受けられる
背景にあるのは、国全体で進む「構造的な賃上げ」と労働移動の円滑化という政策課題です。スキルを身につけた人がより待遇の良い仕事へ移ることを国が後押しする、という位置づけのため、単なる「講座の割引制度」ではなく、キャリア相談から転職支援までが一体で設計されています。運営は、経済産業省の採択・監督のもと、事務局(株式会社野村総合研究所)と全国の補助事業者が担っています。
厚生労働省の教育訓練給付制度が「個人への給付」であるのに対し、本事業は補助事業者経由で受講料が割り引かれる仕組みで、「転職によるキャリアアップ」を明確なゴールに置いている点が特徴です。事業は令和8年度末(2027年3月末)までの継続が予定されています。
補助内容|受講料の最大70%・上限56万円の内訳

補助は2段階に分かれています(執筆時点の公開情報に基づく内容です。最新の条件は公式ポータルでご確認ください)。
| タイミング | 補助額 | 上限 |
|---|---|---|
| 講座修了時 | 受講費用の1/2相当 | 40万円 |
| 転職後1年間の継続就業を確認 | 追加で受講費用の1/5相当 | 16万円 |
| 合計 | 最大70%相当 | 56万円 |
試算例:受講料80万円のプログラムの場合、修了時に40万円、転職して1年間働き続けた時点でさらに16万円、合計56万円が補助され、実質負担は24万円まで下がる計算です。受講料30万円の講座なら、修了時に15万円、転職後にさらに6万円で実質負担9万円となります。なお、転職しなかった場合でも、講座を修了すれば修了時補助(1/2相当)は受けられます。
補助の受け取り方にも特徴があります。補助金が個人の口座に振り込まれるのではなく、補助事業者が提供する講座の受講料があらかじめ割り引かれる(または修了時にキャッシュバックされる)仕組みです。具体的な支払い・還元のフローは補助事業者ごとに異なるため、申し込み前に「いつ・いくら支払い、いつ・いくら戻るのか」を必ず確認しましょう。高額な講座ほど、一時的な立て替え負担が家計に影響するためです。
対象者の条件と対象講座

対象となるのは、次の条件を満たす人です。制度を活用した受講者はすでに多数にのぼり、デジタル分野を中心に社会人の学び直しの定番ルートのひとつになりつつあります。
- 企業と雇用契約を結んでいる在職者(正社員・契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態は不問)
- 雇用主の変更を伴う転職を目指していること(検討段階でも利用可)
- 年齢制限なし。ただし無職・フリーランス・個人事業主は対象外
登録と初回キャリア相談の時点で在職中であることが必要で、退職後の申し込みは対象外です。対象講座は、公式ポータルに掲載された補助事業者が提供するものに限られます。デジタル分野(データ分析、プログラミング、Webマーケティング等)を中心に、幅広い分野の講座が掲載されています。似た内容の講座でも、ポータル掲載外のものは補助対象になりません。
無料で学べる教材から探したい場合は、経産省・IPAのマナビDXも入口として活用できます。
企業の人事担当者が知っておくべき意味
本事業は「転職支援」を含むため、人材を送り出す側の企業には一見不利な制度に見えます。しかし人事担当者にとっては、(1)採用市場にリスキリング済み人材が増え、中途採用の選択肢が広がる、(2)社内のリスキリング制度を整備しないと、学びたい社員が「社外で学んで転職する」ルートを選びやすくなる——という2つの意味を持ちます。自社の育成制度への投資(人材開発支援助成金の活用等)と並行して捉えるべき制度と言えるでしょう。
利用の流れ5ステップ

利用は次の5ステップで進みます。
- 対象条件の確認:在職中であること、転職意思があることを確認する
- 講座・補助事業者を探す:公式ポータルで分野・金額から講座を検索する
- キャリア相談(無料):補助事業者のキャリアコンサルタントと今後の方向性を整理する
- 講座を受講・修了する:修了時に受講料の1/2相当(上限40万円)の補助を受ける
- 転職支援を受けて転職する:補助事業者経由で転職し、1年間の継続就業確認後に追加補助(上限16万円)を受ける
必要書類(修了証明・雇用証明など)や申請手続きの詳細は補助事業者ごとに案内が異なるため、受講前に必ず確認しておきましょう。
講座選びで迷ったら、次の3つの観点で絞り込むのが実務的です。第一に「転職市場での需要」。求人数が多い職種(データ分析、Webマーケティング、ITエンジニア等)に直結する講座は、転職支援のステップまで進みやすくなります。第二に「現職との接続」。現在の業務経験と掛け合わせられるスキルは、未経験分野に飛び込むより転職後の年収が上がりやすい傾向があります。第三に「学習時間の現実性」。在職しながらの受講が前提のため、週あたりの学習時間と修了までの期間が生活リズムに収まるかを冷静に見積もりましょう。キャリア相談は無料なので、講座を決める前に相談で方向性を固めるのが、この制度の賢い使い方です。
注意点とよくある誤解|他の制度との違い

利用前に押さえておきたい注意点が4つあります。
- 追加補助は「補助事業者経由の転職」が条件:自分で見つけた転職先や、別の転職エージェント経由の転職は追加補助(1/5相当)の対象外です。
- 教育訓練給付制度との関係:同一講座・同一費用に対する公的支援の重複利用には制限があります。給付率の高い教育訓練給付制度(最大80%)の対象講座かどうかも含め、どちらが有利かを事前に比較するのがおすすめです。
- 企業向け制度との違い:従業員に受講させたい企業側の支援としては、厚労省の人材開発支援助成金「人への投資促進コース」や事業展開等リスキリング支援コースが該当します。本事業はあくまで「個人」の転職型リスキリング支援です。
- 公募状況・講座は変動する:補助事業者・対象講座は入れ替わりがあり、予算状況により新規受付が変わる可能性があります。最新は公式ポータルおよび管轄窓口でご確認ください。
よくある質問
Q. 転職するかまだ決めていなくても使えますか?
A. 使えます。対象者の条件は「転職を目指している(検討している)在職者」であり、キャリア相談の結果、現職に留まる選択をしても、修了時補助までは受けられます。ただし追加補助(1/5相当)は補助事業者経由の転職が条件です。
Q. 会社に知られずに利用できますか?
A. 申し込み・受講は個人として行う仕組みです。ただし、雇用証明などの必要書類は補助事業者ごとに異なるため、手続きの詳細は各事業者に確認してください。
Q. 教育訓練給付制度とどちらを使うべきですか?
A. 受けたい講座がどちらの対象かでまず絞られます。両方の対象なら、給付率(教育訓練給付は最大80%、本事業は最大70%)だけでなく、転職支援の有無、支払い・還元のタイミング、講座の内容面を比較して選びましょう。同一費用への重複利用はできない点に注意が必要です。
Semuisは、リスキリング支援事業として、企業の人材育成制度の設計支援や、マーケティング・EC領域の実務スキル習得プログラムの提供を行っています。「社員のリスキリングをどこから始めるべきか」「学び直しをどう事業成長につなげるか」といったご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。
