THE MODEL(ザ・モデル)とは?営業プロセスを分業する4つの役割と機能させる実践ステップを解説
2026.08.20
- BtoBセールス
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BtoBの営業組織づくりを調べると必ず出てくるのが「THE MODEL(ザ・モデル)」という言葉です。セールスフォース社で実践され、日本ではSaaS企業を中心に広く普及した営業プロセスの分業モデルですが、「言葉は知っているが自社にどう当てはめればよいかわからない」「導入したが部門間の連携がうまくいかない」という声も多く聞かれます。本記事では、THE MODELの基本、4つの役割とKPI設計、分業の落とし穴、そして自社で機能させるための実践ステップを解説します。
THE MODELとは?営業プロセスを4つに分業するフレームワーク

THE MODELとは、見込み客の獲得から受注、契約後の活用支援までの一連のプロセスを、「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス(外勤営業)」「カスタマーサクセス」の4つの機能に分業する営業組織のフレームワークです。米セールスフォース社の実践をもとに、日本では書籍『THE MODEL』(福田康隆著、2019年)によって広まりました。
従来の日本の営業組織では、1人の営業担当者がリスト作成からアポ取り、商談、受注後のフォローまでを一気通貫で担うのが一般的でした。この方式は顧客を深く理解できる反面、業務が属人化しやすく、「売れる人」と「売れない人」の差が大きくなりがちです。THE MODELは、プロセスを機能ごとに分けて各段階の数値(リード数、商談化数、受注率など)を可視化することで、営業活動に再現性を持たせることを狙いとしています。もともとはSaaS・サブスクリプション型ビジネスで発展した型ですが、リード獲得から受注までのプロセスを数値で管理するという考え方自体は、製造業やEC支援のような無形・有形を問わないBtoBビジネス全般に応用できます。
分業が支持される背景には、営業活動の非効率という現実があります。セールスフォース社の調査レポート「State of Sales」では、営業担当者が実際の販売活動に使えている時間は勤務時間の約3割にとどまり、残りは事務作業や社内調整に費やされていると報告されています。プロセスを分業し、各担当が専門領域に集中することは、この非効率への処方箋の一つなのです。
4つの役割とKPI設計:各部門は何を追うのか

THE MODELの4つの機能には、それぞれ明確な役割とKPIが設定されます。
マーケティングは、広告・コンテンツ・セミナーなどで見込み客(リード)を獲得し、その中から確度の高いMQL(Marketing Qualified Lead)を選別してインサイドセールスに引き渡します。KPIはリード獲得数やMQL数です。インサイドセールスは、電話やメールでリードとコミュニケーションを取り、課題や検討時期をヒアリングして商談の場を設定します。KPIは商談化数やSQL(Sales Qualified Lead)数です。MQLとSQLの設計についてはMQLとSQLの違いとは?定義の決め方・引き渡し基準・商談化につなげる運用を解説で詳しく解説しています。
フィールドセールスは、設定された商談で提案・クロージングを行い、受注を獲得します。KPIは受注数・受注率・受注金額です。カスタマーサクセスは、契約後の顧客の活用を支援し、解約を防ぎ、アップセル・クロスセルにつなげます。KPIは継続率(解約率)や顧客単価の拡大です。サブスクリプション型ビジネスでは、売上の大半が契約後の継続から生まれるため、カスタマーサクセスは「攻めの部門」と位置づけられます。詳しくはカスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違い・重要KPI・立ち上げ5ステップを解説をご覧ください。
重要なのは、各段階の数値が「前工程の成果を受け取り、次工程へ渡す」連鎖になっている点です。リード数×商談化率×受注率という掛け算で売上が決まるため、どの工程がボトルネックかを数値で特定できるようになります。例えば月100件のリードから商談化率20%で20商談、受注率25%で5件の受注という構造が見えていれば、「受注を10件にするにはリードを倍にするのか、商談化率を40%に上げるのか」という議論を、感覚ではなく数値で行えます。
KPI設計で実務上つまずきやすいのは、MQL・SQLといった「引き渡し基準」の定義が曖昧なまま運用を始めてしまうケースです。「資料請求したらMQL」なのか「予算と時期が確認できたらMQL」なのかで、後工程の商談化率は大きく変わります。基準は最初に部門間で合意し、四半期ごとに見直すことをおすすめします。
THE MODEL型組織の落とし穴:情報分断とセクショナリズム

一方で、THE MODELを導入した企業から最も多く聞かれる課題が「部門間の分断」です。各部門が自部門のKPIだけを追うと、マーケティングは質より量でリードを集め、インサイドセールスは確度の低い商談を営業に渡し、営業は受注後の顧客をカスタマーサクセスに丸投げする——という部分最適の連鎖が起き、組織全体の成果はむしろ悪化します。パーソル総合研究所も、THE MODEL型の分業がセクショナリズムや情報分断を招きやすいことを指摘し、営業マネジメント全体の見直しを提言しています。
さらに、購買側の変化も分業モデルに新しい課題を突きつけています。米ガートナー社の調査では、BtoBの購買では通常6〜10人の意思決定関与者がいるとされ、担当者1人を説得すれば売れる時代は終わりつつあります。分業によって顧客接点が細切れになると、こうした複数の関係者の情報が部門ごとに分散し、「誰が何を聞いたか」が組織として蓄積されないという問題が起きやすくなります。
つまりTHE MODELの本質的なリスクは、分業そのものではなく、分業に伴って顧客の文脈(コンテキスト)が失われることにあります。これを防ぐ仕組みをセットで設計できるかが、成否の分かれ目です。実際、うまくいっている組織ほど「分業しているが、顧客情報は全部門が同じ画面で見られる」という状態を作っており、組織図の分け方よりも情報基盤の設計に投資しています。リードの引き渡しから商談化までの具体的な連携方法はリードナーチャリングとは?見込み客を商談につなげる仕組みと実践5ステップをわかりやすく解説も参考にしてください。
自社に合わせて機能させる実践5ステップ

THE MODELを自社で機能させるには、次の5ステップで進めることをおすすめします。
ステップ1は、共通ゴールの設定です。全部門のKPIに、最終成果である受注や継続率への貢献を含め、「自部門の数字だけ達成すればよい」という構造を作らないことが出発点です。ステップ2は、リード引き渡し基準(SLA)の文書化です。MQL・SQLの定義、引き渡し後の対応期限、差し戻しのルールを部門間で合意し、文書に残します。ステップ3は、CRM/SFAによる顧客情報の一元管理です。ヒアリング内容や商談履歴が一つの顧客データベースに集約されていれば、分業しても顧客の文脈は引き継がれます。
ステップ4は、部門横断のパイプラインレビューです。週次や隔週で、マーケティングからカスタマーサクセスまでが同じ数字を見ながら、ボトルネックと改善策を議論する場を設けます。ステップ5は、段階的な導入です。人員の少ない組織で最初から4部門に分ける必要はありません。まず「商談前(インサイドセールス)」と「商談以降(営業)」の2分業から始め、成果を見ながら細分化していく方が現実的です。実際、営業3名の中小企業が「1名をインサイドセールス専任にし、リードへの初回対応を24時間以内に統一した」だけで商談化率が改善したような例は多く、分業の粒度よりも「対応の速さと基準の統一」が先に効果を生みます。インサイドセールスの立ち上げはインサイドセールスとは?SDR・BDRの違いから立ち上げ手順・KPI設計まで解説で詳しく解説しています。
THE MODELは「4部門に分ければ売れる」という魔法の型ではなく、プロセスを数値で管理し、ボトルネックを特定して改善するための思考の枠組みです。自社の人員規模・商材・顧客の購買行動に合わせて設計し直すことを前提に活用しましょう。
近年はAIの活用も分業の前提を変えつつあります。リードへの一次対応や議事録作成、CRMへの入力といった作業をAIが補助することで、少人数でもTHE MODEL型の数値管理を回しやすくなりました。型を教科書どおりに導入することよりも、「自社の顧客が買いやすいプロセスは何か」から逆算して組織と仕組みを設計する姿勢が、これからの営業組織づくりの出発点になります。
まとめ:分業の「型」より、顧客情報がつながる仕組みを
THE MODELは、営業プロセスを4つの機能に分業し、各段階を数値で管理することで営業に再現性をもたらすフレームワークです。一方で、部門ごとのKPI最適化による分断や顧客情報の断絶という落とし穴があり、共通ゴールの設定、SLAの文書化、顧客情報の一元管理といった仕組みをセットで整えることが成功の条件になります。まずは自社の営業プロセスを段階ごとに数値で棚卸しし、ボトルネックがどこにあるかを特定することから始めてみてください。
Semuis株式会社では、BtoB企業の営業プロセス設計、インサイドセールスの立ち上げ、マーケティングと営業の連携体制づくりを支援しています。「THE MODELを自社に合う形で導入したい」という方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。note→ https://note.com/yamakami_semuis
