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免税販売の「リファンド方式」とは?2026年11月開始までに小売店が準備すべき5つの対応

2026.10.02

訪日外国人向けの免税販売が、2026年11月に大きく変わります。これまでの「店頭で消費税を引いて販売する」方式から、「いったん税込価格で販売し、出国時の確認を経て消費税相当額を返金する」——いわゆるリファンド方式へ全面移行するのです。観光庁の「インバウンド消費動向調査」によれば、2025年の訪日外国人旅行消費額は約9.5兆円と過去最高を更新し、1人当たり旅行支出は22.9万円に達しています。この巨大な需要を取り込むうえで、免税対応は小売店にとってますます重要になっています。

本記事では、リファンド方式の仕組みと現行制度からの変更点、そして施行までに小売店が準備すべき対応を、チェックリスト形式で解説します。制度の詳細は今後も情報が更新される可能性があるため、最終的には国税庁・観光庁の最新の公式情報をご確認ください。

リファンド方式とは?「購入時免税」から「出国時返金」へ

リファンド方式とは

この改正は、百貨店や大手ドラッグストアだけの話ではありません。免税対応のハードルが下がることで、商店街の専門店や地方の土産物店、観光地の中小小売店にも関わる変化です。「自店には関係ない」と思っている店舗ほど、一度仕組みを理解しておく価値があります。

リファンド方式とは、免税店が外国人旅行者に販売する際、まず消費税を含んだ通常価格で販売し、旅行者が出国する際に税関で持ち出しの確認を受けたうえで、後から消費税相当額の返金(リファンド)を受ける仕組みです。2026年11月から、従来の「購入時に免税(税抜)価格で販売する方式」に代わって導入されます。

旅行者から見ると「いったん立て替えて、出国時に戻ってくる」形になり、海外で広く採用されているタックスリファンドの仕組みに近づきます。店舗から見ると、販売時点では通常の国内販売とほぼ同じレジ対応になり、これまで免税カウンターで行っていたパスポート確認や税抜計算、書類対応の負担が大きく軽減されるのがポイントです。

基本的な流れは、(1)店舗が税込価格で販売し購入記録情報を国税庁のシステムに送信、(2)旅行者が出国時に税関で購入品の持ち出し確認を受ける、(3)確認情報を受けて消費税相当額が旅行者に返金される——という3ステップです。返金の方法は、クレジットカードへの送金、銀行振込、アプリ送金、空港での現金返金などが想定されています。

何が変わる?現行制度との違いと改正の背景

現行制度との主な違い

今回の改正では、方式の変更に加えて、免税販売の実務を複雑にしていたルールが大幅に簡素化されます。主な変更点は次のとおりです。

  • 「一般物品」と「消耗品」の区分を廃止:これまで品目ごとに異なった取り扱い(購入上限や包装要件)が一本化され、金額判定がシンプルになります。
  • 消耗品の「50万円上限」を廃止:化粧品や食品などの高額購入にも対応しやすくなります。
  • 消耗品の特殊包装(開封防止包装)を廃止:レジでの包装作業が不要になり、オペレーションが大きく軽くなります。
  • 店頭での免税手続きが簡素化:税抜計算や免税書類の作成が不要になり、通常販売に近いレジフローになります。

改正の背景には、免税購入品の国内横流し・転売といった不正の横行があります。従来方式では購入時点で免税してしまうため、実際には国外へ持ち出されない「不正免税」を防ぎにくいという構造的な課題がありました。出国確認を返金の条件とするリファンド方式は、この抜け道を塞ぐための制度設計です。制度対応という点では、物流分野でも2026年4月施行の法改正への対応が求められており、改正物流効率化法とはもあわせてご覧ください。

店舗オペレーションはこう変わる——販売から返金までの流れ

店舗オペレーションの変化

リファンド方式での店舗業務を、現行方式と比べながら具体的に見てみましょう。

販売時:現行方式では、パスポートの確認、免税対象かどうかの判定、税抜価格への変更、消耗品の特殊包装、購入記録情報の送信——と、レジでの工程が多く、繁忙期には免税カウンターに行列ができる原因になっていました。リファンド方式では、税込価格での通常会計に加えて、旅行者情報と購入記録をシステムに登録・送信する操作が中心になります。店頭での所要時間は大きく短縮される見込みです。

販売後:旅行者が出国時に税関の確認を受けると、その情報が店舗(または返金を委託した事業者)に連携され、消費税相当額の返金を実行します。返金を自社で行うか、免税手続きを代行する事業者(返金代行サービス)に委託するかは、店舗の判断になります。自社で行えば手数料を抑えられる一方、返金実務や為替・送金手段の整備が必要です。委託すれば負担は軽い反面、手数料が発生します。

たとえばドラッグストアの場合、現行方式では化粧品や医薬品(消耗品)を専用袋で密封包装し、免税レジで税抜計算を行うため、インバウンド客が集中する時間帯にはレジが大きく滞留していました。リファンド方式では、通常レジで税込会計を行い、購入記録の登録だけを行えばよいため、レジの回転が上がり、機会損失の削減が期待できます。一方で、「その場で安くならないなら買わない」という旅行者が一定数出る可能性も指摘されており、返金の受け取りやすさ(クレジットカード返金への対応など)が店舗選びの新しい基準になるかもしれません。

会計処理:販売時にいったん消費税を預かり、出国確認後に返金するという流れになるため、売上・消費税の計上方法やPOSレジの設定変更が必要になります。顧客対応だけでなく、経理・システム部門を巻き込んだ準備が欠かせません。

2026年11月までに準備すべき5つの対応チェックリスト

準備すべき5つの対応

施行まで残り約1年。免税販売を行っている(またはこれから始める)小売店は、次の5項目を順に確認しましょう。

  1. 免税システム・POSの対応状況を確認する:現在利用中の免税対応POSや免税電子化システムがリファンド方式に対応予定か、ベンダーに確認します。対応時期と費用、データ送信の仕組みの変更点を把握しましょう。
  2. 返金体制を決める:返金を自社で行うか、代行事業者に委託するかを比較検討します。想定する免税売上規模、手数料率、対応通貨・返金手段を基準に判断します。
  3. 会計・経理処理の変更を整理する:税込販売→出国確認→返金という流れに合わせて、消費税の処理や売上計上のルールを税理士・経理担当と確認します。
  4. 店頭案内と多言語対応を準備する:旅行者にとっては「その場で安くならない」大きな変化です。「出国時に返金される」ことを伝える多言語のPOPやリーフレット、接客フレーズを用意し、店頭での混乱とクレームを防ぎます。
  5. スタッフ教育とリハーサルを行う:新しいレジフローの手順書を整備し、施行前にトレーニングの機会を設けます。繁忙期を想定したロールプレイまで行えると安心です。

特に1と2はシステム改修や契約が絡むため、リードタイムが長くなりがちです。2026年の早い段階から動き始めることをおすすめします。

よくある疑問にも触れておきます。まず「免税店の許可は引き続き必要か」については、免税販売を行うには従来どおり所轄税務署による輸出物品販売場の許可が前提となる見込みです。これから免税対応を始める店舗は、許可申請とシステム準備を並行して進めましょう。また、「購入金額の下限はどうなるのか」など細部の要件については、施行に向けて公表される政省令・国税庁の案内で最終確認が必要です。本記事執筆時点の情報をもとにしているため、必ず最新の公式情報とあわせてご確認ください。

中小店こそチャンス——リファンド方式時代の免税販売戦略

中小店こそチャンス

リファンド方式への移行は、対応コストの面では負担に見えますが、見方を変えれば中小の小売店にとってチャンスでもあります。第一に、店頭での免税手続きが大幅に簡素化されるため、これまで「レジ対応が複雑で人手も足りないから」と免税店化を見送っていた店舗でも参入しやすくなります。人手不足への向き合い方は小売業の人手不足対策7つの打ち手でも解説しています。

第二に、消耗品の上限や特殊包装がなくなることで、食品・化粧品などのまとめ買い需要を取り込みやすくなります。インバウンドの客単価は上昇傾向にあり、「大容量セット」「ギフトセット」など、まとめ買いを前提にした売り場・品揃えの工夫が売上に直結します。第三に、免税データが電子化されることで、どの国の旅行者が何をどれだけ買ったかという販売データを施策に活かしやすくなります。

移行スケジュールの面では、施行前日までは現行方式、施行日からは新方式と、切り替えのタイミングで店頭オペレーションが一斉に変わることになります。移行直後は、現行方式の感覚で来店する旅行者も多いと想定されるため、施行前から店頭やSNS、ECサイトで新制度の案内を始めておくと混乱を抑えられます。また、免税販売データの電子化が進むことで、国・地域別の売れ筋分析や、帰国後の越境EC・リピート購入への誘導といった「買って終わりにしない」施策にもつなげやすくなります。価格戦略の観点ではダイナミックプライシングとはの記事も参考にしてください。

一方で、旅行者への説明不足は「レジで安くなると思っていたのに」というトラブルの火種になります。制度移行期こそ、丁寧な案内と接客が店舗の評判を分けるでしょう。制度の詳細・最新情報は国税庁等の公式発表で必ず確認してください。

Semuis株式会社では、小売・EC事業者の販売戦略、店舗オペレーション改善、インバウンド需要の取り込みに関する支援を行っています。免税対応を含む売り場づくりや集客施策のご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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