リテールメディアとは?市場規模・広告の種類・EC事業者の活用法をわかりやすく解説
2026.07.18
- ECモール
- Webマーケティング
「リテールメディア」は、いまEC・小売業界と広告業界の双方から最も注目されているキーワードのひとつです。CARTA HOLDINGSの調査によると、国内リテールメディア広告市場は2025年に6,066億円(前年比129%)へ拡大し、2029年には1兆3,174億円に達すると予測されています。本記事では、リテールメディアの基本から市場動向、広告の種類、EC事業者・広告主それぞれの活用法までをわかりやすく解説します。
リテールメディアとは?注目される背景

リテールメディアとは、小売事業者やEC事業者が、自社のECサイト・アプリ・店舗などの顧客接点を「広告媒体」として広告主に提供するビジネスのことです。Amazonの検索結果に表示されるスポンサープロダクト広告や、楽天市場のRPP広告、コンビニ・ドラッグストアの店頭サイネージ広告などが代表例です。
リテールメディアの最大の特徴は、小売・EC事業者が保有する「購買データ(1st Partyデータ)」を活用できる点にあります。「何を検索し、何をカゴに入れ、実際に何を買ったか」という行動データに基づいて広告を配信できるため、従来のWeb広告よりも購買に近い文脈で、精度の高いターゲティングが可能です。
注目される背景には大きく2つの流れがあります。1つは、Cookie規制の強化により従来型の追跡型ターゲティング広告が難しくなり、小売事業者が持つ購買データの価値が相対的に高まったことです。もう1つは、小売事業者側の事情として、本業の小売より利益率の高い広告事業を新たな収益源として確立したいという動きです。米国ではAmazonの広告事業が年間数百億ドル規模に成長しており、日本の小売・EC事業者もこれに続こうとしています。
国内市場規模と最新動向

CARTA HOLDINGSが2026年1月に発表した調査によると、2025年の国内リテールメディア広告市場は6,066億円で、前年比129%という高い成長率を記録しました。内訳はEC事業者領域が5,236億円と市場の中心を占め、店舗事業者領域が830億円(デジタル広告620億円、デジタルサイネージ210億円)となっています。
今後の予測も強気で、2029年には2025年比約2.2倍の1兆3,174億円規模へ拡大するとみられています。これは国内の主要SNS広告市場に匹敵する規模であり、広告主にとって「主戦場」のひとつになることを意味します。
成長を牽引しているのは、第一にAmazon・楽天など大手EC事業者のフルファネル戦略です。商品検索の結果画面や購入導線に広告を組み込めるため、認知から購買までを一気通貫で設計できます。第二に、実店舗を持つ小売事業者のDX進展です。会員データやID-POSといったデータ資産を収益機会へ転換する動きが進み、自社アプリやサイネージを媒体化する取り組みが広がっています。EC市場そのものも、経済産業省の調査で2024年に26.1兆円(前年比5.1%増)へ拡大を続けており、EC上の広告枠の価値は今後も高まっていくと考えられます。
リテールメディア広告の種類

リテールメディア広告は、配信面によって大きく3つに分類できます。
1つめは「オンサイト広告」です。ECサイトやアプリの中に表示される広告で、検索結果に連動して表示される検索連動型広告(Amazonスポンサープロダクト広告、楽天RPP広告など)と、トップページやカテゴリページに表示されるディスプレイ型広告(楽天TDAなど)があります。購買意欲が高いユーザーに直接リーチできるため、リテールメディアの中核を担う存在です。
2つめは「店舗型(インストア)広告」です。コンビニやドラッグストア、スーパーの店頭に設置されたデジタルサイネージや、小売事業者の公式アプリ内広告がこれにあたります。来店客という確実な購買見込み層に、売場の目の前で訴求できるのが強みです。
3つめは「オフサイト広告」です。小売事業者の購買データを使って、外部のSNSやWebメディアに広告を配信する手法です。たとえば「過去に自社製品を購入した層に似たユーザー」へSNS上でアプローチし、効果は購買データで検証する、といった使い方ができます。広告の表示は外部媒体でも、効果測定を実購買データで行える点が従来のWeb広告と異なります。
自社が広告を出す立場であれば、まず取り組むべきはオンサイトの検索連動型広告です。「その商品カテゴリを今まさに検索しているユーザー」に表示されるため費用対効果を検証しやすく、少額から始められます。店舗型やオフサイトは、ブランド認知や新商品の面的展開など、目的が明確になった段階で追加していくのが現実的なステップです。
広告主・小売それぞれの活用法

先行する米国では、リテールメディアはすでに検索広告・SNS広告に次ぐ「第3の柱」として定着しており、Amazonの広告事業は年間5兆円を超える規模に成長しています。BCGの調査でも世界のリテールメディア市場は今後10年で大きく拡大するポテンシャルがあるとされており、日本はまさにその成長カーブの入口にいる段階です。だからこそ、早期にノウハウを蓄積した事業者ほど優位に立ちやすい市場だと言えます。
広告主(メーカー・ブランド)にとってのリテールメディアの価値は、「購買の直前」にいるユーザーへアプローチできることと、広告接触から実購買までを同一プラットフォームのデータで測定できることです。従来のWeb広告では「広告を見た人が実際に買ったか」の検証が困難でしたが、リテールメディアでは検索連動広告のROAS(広告費用対効果)や、広告接触者の購買率を直接確認できます。新商品の立ち上げ時に検索連動広告で露出を確保し、購買データで効果検証しながら配分を最適化する、といった運用が基本形です。
小売・EC事業者にとっては、既存のデータ資産と顧客接点を「広告収益」という新たな収益源に転換できることが最大のメリットです。小売業の営業利益率は一般に数%程度と低い一方、広告事業は利益率が高く、得られた収益を価格競争力やDX投資へ再投資する好循環を生み出せます。自社ECやアプリを持つ中堅事業者でも、商品詳細ページへのメーカータイアップ枠設置など、小規模から始める事例が出てきています。
国内の具体的な動きとしては、コンビニ大手が店頭サイネージを全国展開して飲料・食品メーカーの広告を配信する取り組みや、ドラッグストア・スーパーがID-POSデータを活用してメーカーと共同で販促効果を検証する取り組みが進んでいます。調査会社の予測では、実店舗事業者によるリテールメディア市場だけでも2029年に2025年比約2.3倍の1,939億円へ拡大するとされており、EC・実店舗の垣根を越えて「小売=メディア」という構図が定着しつつあります。
EC事業者はどう始めるべきか?成果を出すポイント

「リテールメディアを活用する側」としてまず取り組みやすいのは、Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングなどモール内広告の運用です。既に商品を出品していれば少額から出稿でき、購買に最も近い広告面で効果検証ができます。具体的には、Amazonならスポンサープロダクト広告、楽天市場ならRPP広告が「検索連動×クリック課金」の入門メニューにあたり、いずれも商品単位で費用対効果を確認しながら運用できます。
成果を出すポイントは3つあります。1つめは、キーワードを「指名系(ブランド名)」と「一般系(カテゴリ名・悩み系)」に分けて管理することです。指名系はROASが高く出やすいため、混ぜて評価すると一般系の実力を見誤ります。2つめは、ROASだけでなく「新規顧客比率」もあわせて見ることです。広告経由の購入者がリピーターばかりであれば、広告は売上の純増に貢献していない可能性があります。3つめは、広告で獲得した販売実績を検索順位の向上(モール内SEO)につなげる一体運用です。広告とオーガニックを別々に評価せず、商品単位の総合的な成長で判断しましょう。
実務の進め方としては、「月額予算の上限を決めて主力商品×検索連動広告からスモールスタート→2〜4週間データを貯めて検索語句レポートを確認→成果の出た語句へ予算を寄せ、無駄な語句を除外」というサイクルを月次で回すのが基本です。この運用サイクル自体はAmazonでも楽天でもYahoo!ショッピングでも共通なので、まず1モールで型を作り、他モールへ横展開すると効率的です。
あわせて注意したいのが、データの取り扱いです。リテールメディアは購買データという個人に近い情報を扱うため、個人情報保護法や各プラットフォームの規約に沿った運用が前提となります。広告主として利用する場合も、プラットフォームが提供する計測レポートの定義(アトリビューション期間など)を正しく理解しないと、効果を過大・過小に評価してしまう点に注意しましょう。
リテールメディアは今後数年で広告戦略の前提となる市場です。一方で、モールごとに広告メニューやアルゴリズムが異なるため、自社に合った優先順位付けが成果を分けます。
Semuis株式会社では、Amazon・楽天市場などECモールの広告運用を含む、EC事業の売上改善を支援しています。「モール広告の費用対効果を改善したい」「リテールメディアをどう活用すべきか相談したい」という方は、お気軽にお問い合わせください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。note→ https://note.com/yamakami_semuis
