メンタリングの質問例50選|場面別の聞き方とNG質問を解説
2026.09.18
- BtoBマーケティング
メンタリングの成否は、メンターが「何を話したか」よりも「何を聞いたか」で大きく変わります。ところが実際の面談では、聞くべきことが思い浮かばずに沈黙が続いたり、逆にメンターが助言ばかりしてしまったりする場面が少なくありません。本記事では、良い質問に共通する原則を整理したうえで、場面別にそのまま使える質問例を50個掲載し、避けたいNG質問と言い換え方、沈黙が生まれたときの対処まで解説します。
質問の質がメンタリングの質を決める理由

メンタリングは、メンターが答えを与える場ではなく、メンティーが自分の言葉で状況を整理し、次の一歩を自分で決める場です。だからこそ、メンターの役割の中心は「良い質問を投げかけ、最後まで聞く」ことにあります。助言そのものが不要なわけではありませんが、助言はメンティーが状況を語り切ったあとに、選択肢の一つとして差し出すほうが受け取られやすくなります。
日本メンター協会「メンター制度導入実態調査」(2022年9月実施、有効回答500件)では、導入効果について7〜4(普通以上)と回答した担当者が88.2%にのぼりました。同調査で導入目的の1位に挙がったのは「職場のコミュニケーション活性化」、2位は「メンタルヘルス対策」です。いずれも、メンティーが安心して話せる状態をつくれるかどうかに直結するテーマであり、その入り口が質問の設計だといえます。
また、厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」(平成25年4月)では、メンタリングの関係が「初期・深化・解消」の3段階で進行すると整理されています。初期はお互いを知り信頼をつくる段階、深化は具体的な課題に踏み込む段階、解消はメンティーの自立を確認して関係を次の形に移す段階です。同じ質問をどの段階でも使い回すのではなく、段階に応じて聞き方を変えることが重要になります。メンタリングの全体像や制度としての位置づけについては、メンターとは?意味・役割の基本もあわせてご確認ください。
良い質問に共通する3つの原則

1. オープンクエスチョンを軸に組み立てる
「はい・いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンは、事実確認には向いていますが、それだけでは会話が広がりません。「順調ですか」ではなく「どのあたりが順調で、どのあたりが引っかかっていますか」と聞くだけで、返ってくる情報量は大きく変わります。基本はオープンクエスチョンを軸にし、話が発散したときや合意を確認したいときにだけクローズドを混ぜる、という配分が扱いやすい形です。
2. 評価や誘導を質問に混ぜない
「なぜそんなやり方をしたのですか」という問いは、形は質問でも中身は責任追及です。メンティーは防御的になり、事実を小さく見せようとします。同じことを聞きたいなら「そのとき、どんな状況でしたか」「どんな選択肢の中から選びましたか」と、行為ではなく状況を尋ねる形にします。「〜したほうがいいと思いませんか」のような誘導も、結論を先に置いている点で質問とはいえません。
3. 沈黙を待ち、答えを奪わない
良い質問ほど、答えるまでに時間がかかります。メンティーが黙ったとき、それは考えている時間であることが多く、5秒から10秒程度は待つつもりで臨むと落ち着いて構えられます。それでも言葉が出てこない場合は、「今どのあたりを考えていますか」と思考の途中経過を尋ねたり、「うまく言葉にならない感じでしょうか」と状態そのものを確認したりすると、会話が再び動き出します。沈黙を埋めるためにメンターが自分の経験を語り始めると、主役が入れ替わってしまう点に注意が必要です。
なお、沈黙にはいくつかの種類があります。考えをまとめている沈黙、話してよいか迷っている沈黙、質問の意図が伝わっていない沈黙の3つです。考えている場合は待てば言葉が出てきます。迷っている場合は「ここで話した内容は評価には使いません」と前提を伝え直すと動き出すことがあります。意図が伝わっていない場合は、同じ質問を繰り返すのではなく「たとえば先週の業務でいうと、どの場面が近いですか」と具体例に落として聞き直すのが有効です。どれに当たるかは表情や視線から判断しきれないこともあるため、迷ったら「今の質問、分かりにくかったかもしれません」とこちらから言い添えると、メンティーの負担が軽くなります。
面談全体の進め方や時間配分の設計は、メンター面談のやり方・話すことで扱っています。質問リストを使う前提として、話しやすい場をどうつくるかを押さえておくと効果が高まります。
場面別・メンタリングの質問例50選

ここからは、実際の面談で使える質問を場面別に50個挙げます。すべてを順番に聞く必要はありません。1回の面談で使うのは5個から8個程度を目安にし、メンティーの反応を見ながら深掘りする質問を選んでいくのが現実的な使い方です。
初回の関係構築に使う質問10選
- 今日はどんな気持ちでこの時間に来られましたか。
- 入社してから今日までで、印象に残っている出来事は何ですか。
- 今の仕事で、いちばん時間を使っているのはどんな業務ですか。
- 職場で「話しやすい」と感じるのは、どんなタイプの方ですか。
- この面談で話したいこと、逆に触れてほしくないことはありますか。
- 仕事以外で、最近時間を使っていることを教えていただけますか。
- どんなときに「うまくいった」と感じますか。
- 私に期待していることがあれば、率直に聞かせてください。
- 以前の環境と比べて、戸惑っている点はありますか。
- 面談の頻度や進め方について、希望はありますか。
業務の悩みを引き出す質問10選
- 今いちばん手こずっている仕事は何ですか。
- その仕事のどの工程でつまずいていますか。
- うまくいかないとき、最初に何を試しましたか。
- 試してみて、何が分かりましたか。
- 同じ業務でうまくいったときとの違いは、どこにありそうですか。
- 誰に聞けば早く解決しそうだと思いますか。
- 今の業務量は、10段階でいうとどのくらいの負荷ですか。
- 優先順位を1つだけ下げられるとしたら、どれを選びますか。
- 上司や先輩に相談しづらいと感じる理由は何でしょうか。
- この悩みが解決した状態を、具体的な言葉にするとどうなりますか。
キャリアを考える質問10選
- 3年後、どんな仕事をしている自分を想像しますか。
- その姿に近づくために、今できていることは何ですか。
- 逆に、足りないと感じるスキルはどれですか。
- これまでの仕事で、時間を忘れて取り組めたのはどんな作業でしたか。
- 周囲から評価されることと、自分が得意だと思うことは一致していますか。
- 異動や職種転換に関心はありますか。あるとしたらどの領域ですか。
- 社内でロールモデルだと感じる人はいますか。その理由も教えてください。
- 働き方について、譲れない条件はありますか。
- 1年後に「成長した」と言えるとしたら、何が変わっていますか。
- そのために、来月から始められる小さな一歩は何でしょうか。
人間関係の悩みに向き合う質問10選
- チームの中で、いちばんやりとりが多いのはどなたですか。
- その方とのやりとりで、うまくいっている点はどこですか。
- 逆に、噛み合わないと感じるのはどんな場面ですか。
- 相手の立場から見ると、その状況はどう見えていそうですか。
- これまでに試した働きかけがあれば教えてください。
- 関係が良くなったら、仕事のどこが変わりますか。
- 気軽に相談できる人は、社内にどのくらいいますか。
- チームの会議で、発言しづらいと感じることはありますか。
- 自分の伝え方に改善の余地があるとしたら、どこでしょうか。
- 私から誰かに橋渡しをしたほうがよい場面はありそうですか。
振り返りと次アクションを決める質問10選
- 前回の面談から今日までで、いちばん変わったことは何ですか。
- 前回決めたアクションは、どこまで進みましたか。
- 進まなかったとしたら、何が障害になりましたか。
- 今日話してみて、新しく気づいたことはありますか。
- その気づきを、明日の仕事のどこで使えそうですか。
- 次回までに1つだけ試すとしたら、何にしますか。
- それはいつ、どんな場面で実行しますか。
- うまくいったかどうかは、何を見れば判断できますか。
- 進めるうえで、私や周囲に手伝ってほしいことはありますか。
- 今日の時間について、もっとこうしてほしい点はありますか。
この5場面は、前述した「初期・深化・解消」の流れとも対応します。初期には関係構築の質問、深化には業務やキャリア、人間関係の質問、そして毎回の締めくくりに振り返りの質問を置くと、面談全体に一貫した流れが生まれます。
避けたいNG質問と、その言い換え方

質問は使い方を誤ると、信頼を損なう道具にもなります。代表的なのが「なぜ〜しなかったのですか」という問いです。原因を知りたい意図であっても、メンティーには非難として届きます。「何があれば、それができそうでしたか」と条件を尋ねる形に変えるだけで、同じ情報を責めずに引き出せます。
次に多いのが誘導型の質問です。「やはり先に上司へ報告したほうがいいと思いませんか」は、結論を押しつけています。「今の状況で取り得る選択肢を、思いつく限り挙げてみませんか」と広げたうえで、それぞれの利点と懸念を一緒に整理するほうが、メンティー自身の判断力が育ちます。
三つ目は評価を含んだ質問です。「それは相手のほうに問題があるのでは」と聞くと、事実確認の前に結論が決まってしまいます。「そのとき、具体的にどんなやりとりがありましたか」と事実を尋ねる形に置き換えます。四つ目は「大丈夫ですか」という確認で、多くの場合「大丈夫です」としか返ってきません。「今どのくらい余裕がありますか」「気になっていることを1つ挙げるとしたら何ですか」と、程度や具体を聞く形に変えます。
そして、業務との関連が薄いプライベートの詮索は避けるべきです。家族構成や結婚・出産の予定、健康状態などは、メンティーが自発的に話した範囲で受け止めるにとどめ、こちらから掘り下げないのが原則です。加えて、「自分が若い頃は」から始まる問いかけは、実質的に自分語りの前置きになりがちです。経験を共有すること自体は有効ですが、質問の形を借りずに「参考までに私の例を話してもよいですか」と断ってから伝えると、押しつけになりません。メンターとして備えたい姿勢は良いメンターの特徴と心構えでも整理しています。
まとめ:質問は答えを引き出すための道具

良い質問の条件は、オープンに開かれていること、評価や誘導を含まないこと、そして答えを待てることの3点に集約されます。本記事の50問はそのまま使えるように具体化していますが、実際の面談では相手の言葉を受けて次の問いをつくることが最も重要です。用意したリストは、会話が止まったときに立ち返る地図として使うのが適切な距離感といえます。
あわせて、質問の記録と振り返りを仕組みにしておくと運用が安定します。面談後に「どの質問で話が深まったか」「どこで会話が止まったか」を1行ずつメモしておけば、メンター同士で有効な問いを共有でき、制度全体の質が上がっていきます。メンタリングの基本的な考え方や効果についてはメンタリングとは?意味・効果・面談の進め方で詳しく解説しています。
Semuis株式会社では、BtoB企業の営業・マーケティング組織を対象に、育成設計や1on1・メンタリングの運用支援を行っています。質問設計のテンプレート整備、メンター向けの研修設計、面談の振り返り運用の仕組み化まで、自社の体制に合わせた形でご相談いただけます。メンタリングの導入や見直しを検討されている方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。
