BtoB向け企業ターゲティング広告とは?主要4媒体比較

2025.07.22
- BtoBマーケティング
「ABMで特定企業だけのリードがほしい」「商談は欲しいが、コールドコールやコールドメールなどのアウトバウンドアプローチはできるだけ避けたい」
今回は、このようなお悩みを抱えてる方向けの記事です。
BtoBマーケティングを進めるうえで、企業ターゲティング広告は有効な手段のひとつです。
とくに以下のような条件に当てはまる企業にとっては、高い効果が期待できます。
- ターゲットとなる企業の業種や職種が明確である
- 商材の導入決定権を持つ人物が特定しやすい
- 広告費を無駄なく使いたいと考えている
企業ターゲティング広告は、特定の業種・職種・企業に在籍するユーザーに対して、ピンポイントで広告を届けられるのが大きな強みです。
本記事では、企業ターゲティング広告の基礎知識から、実施までのステップ、効果的な媒体の選び方まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
企業ターゲティング広告とは?
企業ターゲティング広告は、企業IPアドレスベースで特定企業に所属するユーザーに配信するマーケティング手法です。
一般的なのWeb広告が不特定多数に向けて配信されるのに対し、企業ターゲティング広告では、業種や企業規模、地域、役職などの情報をもとに、届けたい相手を明確に選んで広告を届けられます。
たとえば、生産管理システムを提供するIT企業が、従業員100名以上の製造業生産管理部門の部長クラスに広告を配信することができます。
ここでは、ターゲティング広告の具体的なメリットと、BtoB広告とBtoC広告の違いについて解説します。
ターゲティング広告のメリット
MQL/SQL獲得効率の向上 | 業種・規模・役職などでセグメントされたターゲットに広告を配信できるため、営業やマーケティング部門が求める「確度の高い見込み顧客(MQL)」や「商談化見込みの高い顧客(SQL)」の獲得効率が向上する |
MQL/SQL獲得CPAの抑制 | 明確にターゲティングされた層にのみ広告が表示されることで、無駄な広告配信が減り、1件あたりの獲得コスト(CPA)を抑えることができる |
ニーズのある企業ユーザーへのリマーケティング | 特定の企業や職種で過去に自社サイトに訪問したユーザーを追跡し、再度広告を配信することで、検討段階の企業に継続的なアプローチが可能となる |
このように、ターゲティング広告は「届けたい相手」に的確に情報を届けることで、より少ない費用で、より高い広告効果を目指せる、成果重視の企業にとって非常に有効な広告手法と言えるでしょう。
BtoB広告とBtoC広告の違い
BtoB(企業向け)広告とBtoC(消費者向け)広告では、ターゲットとする相手や広告の目的、重視するポイントが大きく異なります。
それぞれの特徴を理解することが、効果的な広告戦略には不可欠です。主な違いを以下の表にまとめました。
比較項目 | BtoC広告 | BtoB広告 |
広告の対象 | 一般消費者 | 企業に属する個人ユーザー |
ターゲティング(オーディエンスのセグメント) |
|
|
広告の訴求内容 | 感情や興味を刺激して購買を促す | 業務効率化やコスト削減などの課題解決を提案 |
コンバージョンポイント | 購買、来店 | 資料請求、問い合わせ |
ターゲット設定の具体例 | ファッションに関心のある20代女性 | 従業員500名以上のIT企業に勤める人事部長 |
このように、BtoC広告が個人の感情に訴えかけ、直接的な購買行動を促すことを目的としているのに対し、BtoB広告では、企業の合理的な判断に働きかけながら、課題解決を通じてビジネス成果につなげていく点が大きな特徴です。
広告を設計する際には、こうしたBtoCとBtoBの目的やアプローチの違いをしっかりと理解し、それぞれに適した戦略を立てることが求められます。
特定企業へのターゲティング広告を実施するステップ
ここでは、特定の企業へ効果的にアプローチするための4つのステップを解説します。
- Step1|ターゲット企業の属性(業種・規模・地域)を整理する
- Step2|ターゲット企業に最適な広告媒体と訴求内容を選ぶ
- Step3|担当部門・職種・職位などの条件を定める
- Step4|ターゲットのインサイトに合わせた広告クリエイティブを作成する
それぞれのステップについて詳しく解説していきます。
Step1|ターゲット企業の属性(業種・規模・地域)を整理する
企業ターゲティング広告を始めるにあたって、まず取り組むべきなのは、広告を届けたい企業の属性を明確にすることです。
ターゲットが漠然としていると、効果的な広告戦略の立案は難しくなります。
どのような企業にアプローチしたいのかを整理するために、以下の3つの要素を具体的に設定しましょう。
業種 | 業種:建設業、製造業、ITなど
事業内容:不動産仲介、人材紹介、営業代行など |
企業規模 |
|
配信地域 | 本社や工場の所在地単位で配信が可能
※支社や店舗単位で配信できる媒体もあり |
このようにターゲット企業の属性を具体的に定義することで、より的確で効果的な広告配信戦略を立てることが可能になります
Step2|ターゲット企業に最適な広告媒体を選ぶ
次のステップとして、ターゲット企業に最適な広告媒体と訴求内容を選ぶことが重要です。
企業向け広告では、費用対効果を見極めつつ、配信できるオーディエンス属性の幅やレポートの充実度を考慮する必要があります。
たとえば、ビジネス特化型SNSのLinkedInを使えば、業種や役職、企業規模などを細かく設定できるため、興味関心の高い層へ集中的にアプローチができます。
また、BtoBでは導入事例やホワイトペーパーといった資料による説得力が大きいため、具体的なメリットや成功事例をわかりやすく提示すると効果的です。
Step3|狙いたいオーディエンスを設定する
製品やサービスの内容によって、アプローチすべき部署は異なります。
たとえば、マーケティングツールであればマーケティング部門が、人事システムであれば人事部門が対象となるのが一般的です。
そのうえで、部門内のどの職種(例:エンジニアやマーケター)や職位(例:担当者、課長、部長)をターゲットにすべきかを具体的に設定します。
また、製品の価格帯や導入規模によっては、意思決定を行う立場の人物が変わることもあります。
担当者レベルで十分な場合もあれば、課長や部長クラスの承認が必要なケースもあるため、どの役職に訴求すべきかを見極めてアプローチすることが大切です。
Step4|ターゲットのインサイトに合わせた広告クリエイティブを作成する
最終ステップでは、ターゲット企業の担当者が抱える課題や求める成果といった「インサイト(深層心理)」を捉え、その心に響く広告クリエイティブを作成することが重要です。
共感を得る問いかけや、具体的な効果を伝える表現を盛り込むことで、クリック率と狙った企業からのリード・商談獲得数向上が期待できます。
また、これまでに整理した企業の業種・規模・地域、そして担当者の職種や役職などを手がかりに、どんな悩みを抱えているのか、何を目指しているのかを想像しながら設計しましょう。
さらに、広告を出す媒体の雰囲気に合ったデザインを意識したり、複数パターンを用意してABテストを行ったりすることで、クリエイティブの精度はさらに高まります。
ここからは、こうした企業ターゲティング広告を実現するために活用されている主要なプラットフォームについてご紹介します。
企業ターゲティング広告で活用される主要プラットフォーム4選
企業ターゲティング広告を実施する上で、適切な広告プラットフォームの選定は極めて重要です。
各プラットフォームは独自のターゲティング技術や特徴を持っており、自社の目的やターゲットに合わせて最適なものを選ぶ必要があります。
ここでは、企業ターゲティング広告でよく活用される主要なプラットフォームを4つご紹介します。
- ADMATRIX DSP
- LinkedIn広告
- シラレル
- i-mobile Ad Network
それぞれのプラットフォームの特徴を理解し、自社の広告戦略に最適なものを見つけましょう。
ADMATRIX DSP | シラレル | LinkedIn広告 | i-mobile Ad Network | |
配信手法 | ・企業IP
・ユーザーデータ |
・企業IP
・ユーザーデータ |
・企業IP
・ユーザーデータ |
・企業IP
・ユーザーデータ |
最低出稿金額 | 30万円〜 | 50万円〜 | なし(クリック課金) |
|
自社での運用調整 | × | × | ◯ | ◯ |
企業指定ターゲティング | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
職種指定ターゲティング | ◯ | ◯ | ◯ | × |
職位(役職)指定ターゲティング | ◯ | ◯ | ◯ | × |
企業別成果レポート | ◯ | ◯
最低出稿額の基準あり |
◯
無料 ※制限あり |
◯ |
ADMATRIX DSP|IPアドレスを活用した高精度ターゲティング
ADMATRIX DSPは、株式会社マイクロアドが提供するBtoB向けの広告配信プラットフォーム(DSP)です。
その強みは、国内最大級のIPアドレスデータベースと独自の企業情報を掛け合わせた「オフィスターゲティング」という機能を備えている点です。
この機能を活用することで、広告を配信したい企業を個別に指定できるだけでなく、業種や従業員数といった属性情報をもとに、効果的にターゲットを絞り込めます。
加えて、特許出願中のDOI技術を導入することで、これまで配信が難しかった動的IPアドレスを持つ中堅・中小企業にもアプローチが可能となりました。
これにより、広告の到達範囲を大きく広げることができます。
また、ADMATRIX DSPでは多彩なターゲティング手法が用意されているのも魅力の一つです。
特定企業への広告配信に加え、業種や規模に応じたセグメント配信、サイト訪問者へのリターゲティング広告、さらには外部オーディエンスデータとの連携など、目的に応じて柔軟な対応が可能です。
LinkedIn広告|ビジネス特化型SNSを活用した職種ターゲティング
LinkedIn広告は、ビジネスに特化したSNS「LinkedIn」の特性を活かした広告配信サービスです。
もっとも特徴的なのが、LinkedInというビジネスSNSのプラットフォームに広告配信ができる
点です。一般的な企業ターゲティング広告がWebメディア上で配信されるのに対し、LinkedInではビジネス目的で利用しているユーザーがほとんどであるため、CTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)が高くなりやすく、興味・関心層から検討層まで効果的にアプローチできます。
ターゲティングの切り口も非常に多彩で、ビジネス属性に基づいたセグメントを細かく指定できます。
主なセグメント項目は以下の通りです。
- 会社名
- 業種
- 企業規模(従業員数)
- 職種・役職
- 学歴(学位・専攻)
- 保有スキル
たとえば、「製造業の経理部門で予算管理に関心のある課長職のユーザー」や「IT企業のマーケティング部門を統括している部長職のユーザー」など、非常に具体的な条件でターゲットを設定できます。
このように、LinkedIn広告はビジネス属性に基づいた詳細なターゲティングが可能であり、他の広告プラットフォームと比較しても、より精度の高いアプローチが可能です。
シラレル|企業規模・業種別にアプローチできるABM対応広告
シラレルの特徴は、約1,000万件以上のIPアドレス情報、さらに名刺管理アプリ「Eight」といった外部データとの連携にあります。
これにより、特定の企業や意思決定者に対して、精度の高い広告配信が可能です。
たとえば、「中小企業の人事担当者」や「製造業の現場責任者」など、一般的な広告ではリーチが難しい層にも、的確にアプローチすることができます。
また、2,000億インプレッションを超える国内の配信ネットワークを活用しており、経済系メディアをはじめとする多様な媒体で広告を表示できるのも強みです。
i-mobile Ad Network|膨大な配信面を持つ国産アドネットワーク
i-mobile Ad Networkは、国内最大級の広告配信ネットワークを持つプラットフォームです。
その強みは、SNSやゲーム、マンガ、動画配信アプリ、マッチングアプリなど、多様な媒体への広告配信が可能な点にあります。
企業ターゲティング広告の注意点
企業ターゲティング広告の注意点とデメリットには大きく3つあります。
- 広告経由で直接リードや商談獲得に繋がらないことも多い
- リスティング広告などと比べて、リードCPAが高くなることが多い
- 媒体によっては、オーディエンス設定・配信面・入札単価の運用調整ができない
それぞれ解説していきます。
注意点1: 広告経由で直接リードや商談獲得に繋がらないことも多い
企業ターゲティング広告は認知度の向上や、企業内の意思決定者へのアプローチを主な目的とするケースが多く、問い合わせや契約といったアクションに直結しないこともあります。
たとえば、製造業やIT業界など複数の業種・職種をターゲットに設定した場合、広告を見た担当者が社内で検討を重ねる必要があり、実際に商談へと進むまでに時間がかかることが少なくありません。
そのため、検索連動型広告(リスティング広告)のように即時の反応を得られるタイプの広告と比べると、結果が見えにくく、効果を感じにくいといった側面もあります。
こうした背景を踏まえると、企業ターゲティング広告は単独で完結させるのではなく、他のマーケティング施策と組み合わせて、複数回の接点をつくりながら見込み顧客を育てていくことが大切です。
注意点2: リスティング広告などと比べて、リードCPAが高くなることが多い
リスティング広告と比べると、企業ターゲティング広告はリードCPAが高くなる傾向があります。
これは、企業や業種、役職などをピンポイントで狙うため配信母数(リーチする企業ユーザー数)が少ないので、期待したほどのリード数は獲得できないことが原因です。
また、ユーザーのニーズが必ずしも顕在化していない状態で広告が表示されるため、リスティング広告ほどコンバージョン率(CVR)が上がりにくい点も影響します。
さらに、バナーやディスプレイを中心とした配信では、問い合わせや資料請求への導線が長くなりがちで、成果に直結しにくいケースが多いです。
そのため、高いCPAを許容しつつ中長期的に見込み顧客を育成する視点が必要になります。
注意点3: 媒体によってはオーディエンス設定・配信面・入札単価の運用調整ができない
企業ターゲティング広告を検討する際は、媒体によっては広告主側で細かな運用調整がしにくい点には注意が必要です。
こうした広告媒体の多くは独自のアルゴリズムを採用しており、あらかじめ用意した企業リストを取り込むだけで、配信設定が自動で最適化される仕組みになっているためです。
ABM(アカウントベースドマーケティング)に対応した広告プラットフォームでは、企業のIPアドレスや業種、従業員規模といった属性をもとに、配信先やオーディエンスを自動で選定し、入札単価も配信媒体者側が調整するケースがあります。
このような仕様の場合、広告運用者が手動でクリエイティブのテストを繰り返したり、入札価格を日々微調整したりといった柔軟な運用は難しくなります。
そのため、こうした制約を理解しないまま導入してしまうと、「思ったような成果が出ない」「改善施策を試せない」といった状況に陥る可能性もあります。
導入前には、利用する広告媒体の仕組みや、どこまで自社で調整できるのかといった運用の自由度をしっかり確認しておくことが重要です。
まとめ
本記事では、企業ターゲティングができる広告の紹介や始め方を解説しました。マーケティング支援会社や営業コンサルティング会社に依頼すると費用が高くついてしまうこともあり、できる限り自社でチャレンジできるとよいでしょう。
Semuis株式会社でもABMや企業ターゲティング広告の戦略策定、実行の無料アドバイスをしております。相談先がいなくて困っている方がいましたらお気軽にご連絡ください。

Semuis株式会社 代表取締役CEO。2009年新卒でインナーブラディング支援会社に入社。以後、BtoBとBtoCスタートアップ〜上場企業まで50社以上のマーケティング、セールス支援に関わる。2020年、自分の人生は残り1万日しかないと悟り、2023年にSemuis株式会社設立。まだ世に広まっていない優良企業の発掘・発展と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ。