BtoBにおけるWebマーケティング施策は、新規顧客獲得でもっとも費用対効果の高いチャネルと言えます。なぜならば、展示会やOOH広告などのオフライン施策と違って「いますぐ無料で実施できる施策」が多く存在するためです。

この記事では、スタートアップや予算を多く使えない企業向けに、無料〜低予算で取り組めるWeb集客施策について解説します。

Webマーケティング（Web集客）の費用相場

Web集客とは、WebサイトやSNS、オンライン広告などを通じて企業や製品、サービスに対する認知を広め、新しい顧客を獲得する活動です。実際にどのくらいの予算比率をWebマーケティングに投下しているのか？、気になる点ではないでしょうか。

中小企業におけるWeb集客の予算相場

出典：【自主調査】中小企業の広告宣伝費用はどのくらい？調査データを大公開！｜アイ・モバイル株式会社

中小企業は大企業に比べてマーケティング予算が限られているため、よりいっそう効果的な集客を求められています。

2021年にアイ・モバイル株式会社が行った調査では、年間売上5,000万円以下の中小企業が1年間で広告・宣伝にかけた費用は、平均29万円でした。

また2023年に行われたSansan株式会社の調査にて、従業員数が100名～1,000名超の企業を対象にBtoB事業のマーケティングの重要性について尋ねたところ、規模に関わらず9割以上の企業が「重要」と回答しています。

コロナ禍での対面営業の制約や新規顧客の獲得の難しさを背景に、BtoBにおいても、Webマーケティングの重要性が高まっていることが伺えます。

【無料でできる】Web集客の施策5選

ここからは、無料で取り組みを始められ、かつ成果が出やすいWeb集客施策を5つご紹介します。

1．SEO対策

SEO対策とは、Webサイトが検索エンジンの結果ページで上位に表示されるように最適化する一連の手法のことを指します。SEO対策は主に「内部施策」と「外部施策」の2つに分けられます。

内部施策	自社サイトの構造やコンテンツを最適化する
外部施策	他のWebサイトからのリンクを増やすことで、検索エンジンの評価を高める

外部施策の一例としては、コンテンツ作成が重要です。具体的には、以下のようなコンテンツを作成し、それぞれの目的に合わせて展開します。これらの記事に特定のキーワードやフレーズを自然に組み込み、検索エンジンのランキング向上を目指します。

事例記事	実際の成功事例を共有し、顧客の信頼を得る
コラム記事	業界のトレンドや専門知識を共有し、ブランドの信頼性を高める
サービスサイトのページ拡充	製品やサービスの詳細な情報を提供し、顧客の理解を深める

実際にSEO対策を行う際には、専門知識を持つ人が効果的なキーワード選定やコンテンツ作成を行うことが重要です。また、分析ツールを利用してWebサイトのトラフィックやユーザーの行動をモニターし、改善点を見つけて、適宜対策を施すことも大切です。

Googleツールを活用して分析する

Web集客の成功には、効果的な分析が不可欠です。Googleが提供する無料のツールは、Web集客のパフォーマンスを分析し、改善策を考える上で非常に役立ちます。

Googleアナリティクス	Webサイトのトラフィックやユーザー行動を詳細に分析できる どのコンテンツが効果的で、どのページが最も訪れられているのかがわかる
Googleトレンド	業界のキーワードトレンドを把握し、人気のトピックやキーワードを見つけることができる
Googleサーチコンソール	サイトの検索パフォーマンスを測定し、検索エンジンのランキングを改善するための洞察が得られる Webサイトのエラーを特定し、解決するのに役立つ

Googleビジネスプロフィールを活用

他にも、自社サイトを検索上位に表示させる施策として、Googleビジネスプロフィール（旧Googleマイビジネス）を活用する方法もあります。

これは、ビジネスオーナーが登録しなくても、Googleがインターネット上の情報やユーザーの投稿から、自動でプロフィールを作成するものです。

しかし、自動生成されるプロフィールは、最低限の情報しか含まれていないことが多く、場合によっては誤った情報が表示されることもあります。

オーナーとしてGoogleビジネスプロフィールに登録することで、自社情報を正確にGoogle検索やGoogleマップ上で表示・管理することができます（登録は無料）。

■Googleビジネスプロフィール（旧Googleマイビジネス）の特長

• 店舗や会社の情報をGoogle検索やGoogleマップ検索結果に表示できる
• 店舗への来店を促進したり、悪意のあるレビューをGoogleに報告したりできる
• ビジネスプロフィールに魅力的な紹介文や写真を掲載することで、ユーザーの興味を引ける
• Google広告アカウントをリンクさせて運用すると、店舗の位置に基づいた広告配信・入札調整するなど、より効率的な広告運用が可能

Googleビジネスプロフィールで正確で魅力的な情報を提供することで、より多くの顧客との接点をもてるようになります。

2．SNS運用（X, Instagram, LinkedIn, LINEなど）

SNSで企業・店舗の公式アカウントを運用することで、認知度を高め、ユーザーとコミュニケーションを取れるようになります。

数あるSNSの中でも、特に中小企業にはX（旧Twitter）の活用がおすすめです。調査によると、企業が最も利用しているSNSはXだとされており、さまざまな業種の企業が集客や情報発信の場として活用しています。

ただし、定期的にSNSに投稿したり、ユーザーとコミュニケーションを取ったりしなければ、関心が失われてしまいます。また情報が古い・投稿に一貫性がないことが続くと、ブランドイメージの低下を招く恐れもあります。そのため、SNSの運用は計画的に行わなければならない点に留意しておきましょう。

 

3．オウンドメディア

オウンドメディアとは、企業が保有するWebプラットフォームのことで、ブログや情報提供サイトなどが含まれます。オウンドメディアを運用することで、広告費を抑えつつ、コンテンツによる集客が期待できます。

ただし、コンテンツ作成やサイト運用には人件費などのコストがかかります。制作を外注する場合は、数十万から数百万円の費用がかかることもあります。

オウンドメディアを立ち上げる際は、「WordPress」の利用がおすすめです。WordPressはWebサイト作成初心者でも扱いやすく、多くの無料テーマやプラグインが提供されているため、低コストで高機能なサイトを構築することが可能です。

4．フォーム営業

Webサイトに設置された問い合わせフォームからメールを送って顧客リストを獲得する手法です。返信率は0.1％〜1%程度と決して高くありませんが、獲得したリードは資産になっていきます。フォーム送信自体は無料で行えるため、CPAが0円で受注に繋げることも可能です。一方で、送付リストの収集や文面作成に時間とコストがかかります。また、文面の文字数制限があったり、開封者がどの部署の誰かがわからないこともデメリットです。

5．メールマガジン（ニュースレター）

メールマガジンは、低コストで気軽に始められるWeb集客施策で、顧客との長期的な関係を築くのに有効です。

メールマガジンを通じて顧客に直接的にアプローチし、新しい製品やサービス、プロモーションを紹介することができます。

ただし、読者の興味や関心に合わせた価値あるコンテンツを提供しなければ、効果はありません。そのためには調査・分析が重要ですが、時間と労力を要するのがデメリットとなりえます。

おすすめなのは、「HubSpot」のような専用ツールを使うことです。HubSpotには無料プランがあり、メールマガジンの作成から配信、効果測定までを一元管理できます。無料のHubSpot CRM（顧客管理システム）で顧客情報を管理・整理できるのも魅力です。

メールマガジンは送って終わりではなく、得られたフィードバックを活用し、効果的なメールマガジンとそうでないものを把握して、今後の戦略を見直していくことが重要です。

無料でWeb集客をするメリットとデメリット

無料でWeb集客を試みる際の最も大きな利点は、何と言ってもコストがかからないことです。しかし、無料の手法には限界もあります。

以下から、無料でのWeb集客のメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。

無料のWeb集客のメリット

無料でWeb集客を行う最大のメリットは、その名の通り「コストがかからない」点です。初期投資を気にせず、手軽に取り組むことができるのは、特にマーケティング予算に制約がある中小企業やスタートアップにとっては大きな魅力です。

また、無料の施策を試すことで、どのようなアプローチが自社のターゲットに合っているのか、効果的な方法を見つける手助けとなるでしょう。簡単に始められるので、まずは試してみる価値があります。

無料のWeb集客のデメリット

無料のWeb集客施策は、初期投資が不要なのが大きなメリットですが、その一方、いくつかのデメリットも存在します。

時間と労力がかかる

無料の集客方法を採用すると、効果が現れるまでに時間がかかることが多いです。例えば、SNSを使用した集客の場合、アカウントのフォロワーを増やすことから始める必要があります。フォロワーを短期間で増やすのは難しく、一定期間は成果が上がらないことを前提に、投稿と分析を繰り返し行わなければなりません。

また、社内に専門知識をもった人がいないと、施策の効果や戦略の正しさを判断するのが難しいです。施策の効果が思うように上がらなかった場合、その原因を正確に特定するのは難しくなります。

参入障壁が低いため、競争が激しい

無料でのWeb集客は、その手軽さから多くの企業や個人が取り組んでいます。そのためライバルが増えやすく、自然と競争率が高まります。

特に、競合他社が有料の施策を導入している場合、無料の施策だけでは顧客獲得が難しくなることが考えられます。無料の施策を採用する場合は、他の企業との差別化を図る工夫や、独自の価値を提供することが求められます。

専門知識や深い理解が必要

効果的にWeb集客を行うには、専門的な知識が不可欠です。そのため、無料で始められる集客施策をより効果的に活用するためには、専門家に依頼してもよいかもしれません。

例えば、SEOを効果的に活用するためには、キーワード選定やコンテンツ作成の方法など、多岐にわたる知識が求められます。またSNSを活用する場合、各SNSの特性やターゲットとなるユーザー層の理解、投稿のタイミングや内容の工夫など、細かな戦略が必要となります。

予算内で効率的に集客を行うには、プロのサポートを受けた方が、より費用対効果を上げることが期待できます。

無料でWeb集客を成功させるためのポイント

無料でWeb集客を成功させるための主要なポイントは、以下のとおりです。

• 集客する目的を明確にする
• ターゲット層を絞る
• 複数の施策で集客する
• 定期的にPDCAサイクルを回す
• 有料でのWeb集客も検討する

集客活動を開始する前に、目的を明確に定義することが重要です。目的が明確であれば、どのようなアクションを取るべきか、またどのように成功を測定するかがはっきりとします。

また、ターゲットとする顧客層を明確に定義し、その層に合わせたコンテンツやメッセージを作成することも重要です。

定期的に活動の効果を分析し、必要に応じて戦略を見直すことで、継続的に成功を追求することができます。

【有料だけど効果大】Web集客の施策6選

無料のWeb集客施策は手軽に始められますが、効果を上げるには一定の知識と時間が必要です。

一方、有料のWeb集客施策には、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下に、コストはかかるものの効果的なWeb集客施策を6つピックアップしました。

無料・有料のどちらの施策も、難しさを感じる場合は、専門家や代行サービスの利用を検討しましょう。

1．リスティング広告

リスティング広告とは、ユーザーが検索エンジンでキーワードを入力した際に表示される広告のことを指します。基本的には有料の方法ですが、特定の条件を満たすことで、無料での掲載が可能になるキャンペーンを行っているサービスもあります。

以下に、国内で最もメジャーなリスティング広告サービス2つをご紹介します。双方とも、リスティング広告だけでなくディスプレイ広告、動画広告など、豊富な広告の種類をもっています。

Google広告	Googleは世界中で最も利用されている検索エンジンであり、多くのユーザーに広告を表示できる ユーザーの検索履歴や閲覧履歴、興味・関心に基づいて、広告を表示するユーザーを細かく絞り込める Google Analyticsとの連携により、広告の効果を詳細に分析できる
Yahoo!広告	Yahoo! JAPANとその提携先に配信される広告が中心 Yahoo! JAPANは日本国内での知名度・信頼性が高いため、広告のクリック率が高まる可能性がある  Yahoo! JAPANのIDを持つユーザーの行動履歴や興味・関心に基づいて、広告を表示するユーザーを絞り込める

なおGoogle広告では、新しく広告アカウントを作成する企業向けに、広告クレジットを提供しています。広告予算として6万円を使うと、同額の広告クレジットを受け取ることができます。つまり、6万円分の広告を、Googleプラットフォーム上で実質無償で展開することができます。

これまでGoogle広告を使ったことがない企業様は、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。

参考：Google 広告 – 新規顧客の獲得、売上増加に活きるデジタル広告｜Google広告

2．SNS広告

SNS広告とは、X（旧Twitter）やFacebookなどのSNS上に配信する広告です。タイムラインやストーリーズ、おすすめアカウント欄に表示されるものが含まれますが、最近ではテキストとバナーだけでなく、動画やカルーセルを用いた広告も増加しています。

ユーザーの趣味や過去の行動に基づきターゲティングされるので、高いコンバージョン率が期待できます。

下記に、主な2つのSNS広告の特徴をまとめました。

Twitter広告	掲載広告に対し、通常のツイートと同じようにリツイートやいいねができるため、二次拡散が期待できる 拡散性が高いため、ブランドの認知度向上やリアルタイムなキャンペーンが効果的 利用ユーザーは10代と20代が多く、若年層に向けて広告配信しやすい
Facebook広告	ターゲティング精度が高く、長期的な顧客獲得やリターゲティングが得意 1日あたり数百円から配信でき、リスクを抑えて始められる 利用ユーザーは30～40代が中心

各SNSやSNS広告の特徴・違いを踏まえ、目的やターゲットに応じて、適切なプラットフォームを選択しましょう。

3．ポータルサイト

ポータルサイトは、インターネット上のさまざまなコンテンツへの入り口となるサイトです。ニュース、天気予報、ファイナンスなど、多くのコンテンツを提供しています。

ポータルサイトへの広告掲載費用については、無料で掲載できるところが多いです。ただし、目立つ位置に広告を掲載したり、特定のプランを選択したりすると、費用が発生します。

toB向けマーケティングにおすすめのポータルサイトとしては、「ITトレンド」があります。

特徴	検討している製品やシステムに関して、複数の企業からまとめて資料請求が可能 SFA、RPAツール、人事評価システムなど多岐にわたる製品検索が可能 会員登録が無料で、登録後は都度の個人情報入力なしに資料請求ができる
広告掲載費用	掲載費用は、初回掲載時の初期費用のみで、製品・サービスの数に制限なく掲載できる 固定費・月額費用は無料 資料のリクエスト（潜在顧客のデータの取得）ごとに課金される成果報酬型課金

特にIT業界では日々多くの製品がリリースされ競合製品が増えているため、ITトレンドのような比較サイトへの掲載は、認知度向上に非常に有効です。資料請求などの機能を活用して、ユーザー情報を獲得することも可能です。

4．ディスプレイ広告

ディスプレイ広告は、Webサイトやアプリ上でのビジュアル広告で、テキストと画像を組み合わせて視聴者の関心を引き、アクションを促すものです。

■ディスプレイ広告の課金方法

クリック課金型	広告がクリックされるたびに費用がかかる
インプレッション課金型	広告が表示された回数に応じて課金される
コンバージョン課金型	広告を通じて特定のアクション（購入、問い合わせなど）を行ったユーザーに対して課金される

ディスプレイ広告の中でもおすすめなのが、YouTubeのページ上で、動画ではなく画像で広告を掲載する「Googleディスプレイネットワーク広告」です。

• 月間ユーザー数は国内だけで7,000万人以上おり、多様なオーディエンスにアクセス可能
• 属性や興味を基にした高精度なセグメント設定が可能
• Google広告を利用して簡単に広告出稿ができる

ディスプレイ広告は通常、有料の方法となります。しかし、例えば先ほどご紹介したGoogle広告では、6万円の広告費を投じると、同じ金額の広告クレジットがもらえるキャンペーンが行われています。

5．アフィリエイト広告

アフィリエイト広告は、商品やサービスの提供者（アドバタイザー）が、その商品やサービスを宣伝・販売してくれるサイト（アフィリエイター）に対して、成果に応じた報酬を支払う広告手法です。

最大の特徴は、広告が結果を生む（商品が売れる、サービスが利用されるなど）場合のみ費用が発生することです。費用は、基本的には単価×件数となります。

しかし、特定のアフィリエイトサービスプロバイダー（ASP）を介している場合、手数料が追加で発生することもあります。

成果が出るまでの費用は発生しないため、リスクを最小限に抑えつつ、高いROI（投資対効果）を期待することができます。

アフィリエイト広告サービスを提供するサービスプロバイダー（ASP）として有名なのは、「A8.net」です。

■A8.netの特徴

• 広告が表示されるだけやクリックされるだけでの費用は発生せず、実際に購入や申込みなどの成果が発生した場合のみ費用がかかる
• 335万サイト以上がA8.netに登録しており、多様なメディアからの露出が期待できる
• スタート専任チームが広告の開始から5か月間をサポートしてくれる

初期投資を抑えながら効果的な集客を行いたい企業には、ぜひとも検討していただきたい方法です。

6．記事広告

記事広告とは、他社が運用するWebメディアやポータルサイトなどに、ブログのような形式で広告を掲載する手法です。ターゲットユーザーが多く訪れるサイトに掲載すると、大きな効果が期待できます。

しかし、この方法を採用する際には、自社で記事を作成し、それを他社のメディアに掲載するための掲載費用が発生します。さらに、記事を作成するための人件費も考慮する必要があります。

一般的に、記事広告の相場は数十万～数百万と比較的高額です。しかし、例えばプレスリリースを広い意味での記事広告と捉えれば、比較的低予算でも実施が可能です。

例えば、プレスリリースの大手配信サイト「PR TIMES」では、1件3万円から掲載可能となっています。

■PR TIMESを使うメリット

• プレスリリースに「キーワード」「カテゴリ」「位置情報」などの属性を設定することで、関心のあるメディア関係者に自動的に配信ができる
• 公式SNSとの連携により、さまざまなSNSでシェアされやすい
• PR TIMESはGoogleをはじめとした検索エンジンからの評価が高いため、プレスリリースが検索結果の上位に表示されやすい

これらの特長を活用することで、低予算でも効果的なプレスリリースの配信が可能となり、情報発信の幅を広げることができます。

まとめ

Web集客は、BtoBサービスを行う中小企業にとっても非常に重要な戦略の一つです。特に、マーケティング専任者がいない中小企業や、これまでWebマーケティングを本格的に取り組んでこなかった企業は、効果的な方法を知る必要があります。

本記事では、無料でのWeb集客施策から、費用対効果の高い有料の方法まで、さまざまな手段を紹介しました。それぞれの方法にはメリットとデメリットがありますので、自社の状況や目的に合わせて選択し、試してみることが大切です。