ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?進め方5ステップとKPI設計をわかりやすく解説
2026.07.21
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「リードは集まっているのに、大型商談につながらない」「営業が本当に売りたい企業に、マーケティング施策が届いていない」――BtoBマーケティングのこうした課題を解決するアプローチとして注目されているのが、ABM(アカウントベースドマーケティング)です。本記事では、ABMの基本概念から従来型マーケティングとの違い、いま取り組むべき理由、進め方の5ステップ、KPI設計までをわかりやすく解説します。
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?

ABM(Account Based Marketing)とは、自社にとって価値の高い特定の企業(アカウント)をあらかじめ選定し、その企業に狙いを定めてマーケティングと営業のリソースを集中投下する戦略です。
従来のリードジェネレーション型マーケティングは、広告やコンテンツで幅広く見込み客(リード)を集め、ナーチャリングで絞り込み、営業に引き渡す「ファネル型」の発想です。これに対しABMは、先に「攻略したい企業リスト」を決め、その企業の意思決定者に向けて個別最適化した施策を展開する「逆ファネル型」の発想を取ります。
ABMの本質は「マーケティングと営業が同じターゲットリストを見て動く」ことにあります。マーケティングはリード数ではなく、ターゲット企業内での認知・関与の深まりに責任を持ち、営業はその情報をもとに最適なタイミングでアプローチします。単価が高く、意思決定に複数の関係者が関わる商材(エンタープライズ向けSaaS、製造業の部材、コンサルティングなど)ほど効果を発揮しやすい手法です。なお、広告配信で特定企業を狙う「企業ターゲティング広告」はABMを構成する戦術のひとつであり、ABMはリスト選定から営業連携までを含む、より上位の戦略フレームワークです。
なぜ今ABMなのか:市場動向とデータ

ABMは海外では標準的な手法として定着しつつあり、日本でも導入が加速しています。背景には次の3つの変化があります。
①効果を裏付けるデータの蓄積:ITSMA(現Momentum ITSMA)の調査では、マーケターの大多数が「ABMは他のマーケティング施策よりも高いROIをもたらす」と回答しており、この結果は複数年の調査で一貫しています。市場側でも、ABM関連プラットフォーム市場は年率16%前後で成長が続くと予測されており(The Business Research Company調べ)、投資が拡大している分野です。
②買い手の行動変化:BtoBの購買担当者は、営業に会う前にWebで情報収集を済ませるのが当たり前になりました。「待ち」のインバウンドだけでは、そもそも検索してくれない優良企業に出会えません。狙った企業に能動的に接点を作るABMの価値が相対的に高まっています。
③実行コストの低下:かつてABMは「1社ごとに個別コンテンツを作る」高コストな手法でした。現在は生成AIによるコンテンツのパーソナライズ、インテントデータ(企業の検索・閲覧行動から関心を推定するデータ)の活用により、中堅・中小企業でも現実的なコストで実行できるようになっています。2026年現在は、新規獲得だけでなく既存顧客の拡大にも同じ発想を適用する「ABX(アカウントベースドエクスペリエンス)」への広がりもトレンドです。
また、日本市場はABMと相性が良いと言われます。多くのBtoB業界で「主要プレイヤーが数十〜数百社に限られる」寡占的な構造があり、そもそも狙うべき企業が特定しやすいためです。「業界の主要企業リストは営業の頭の中に既にある」状態からスタートできる分、海外よりも導入のハードルは低いと言えます。ツール面では、高価なABM専用ツールを最初から入れる必要はなく、既存のMA(マーケティングオートメーション)とSFA/CRMに「ターゲットアカウントフラグ」を立てて運用を始めるのが現実的です。
ABMの進め方:5ステップ

STEP1 ターゲットアカウントの選定:「LTVが高い」「自社の強みが刺さる」「予算・導入可能性がある」という観点で、営業とマーケティングが一緒に企業リストを作ります。既存の優良顧客の共通点(業種・規模・課題)を分析してリスト化するのが実践的です。最初は10〜30社程度のパイロットリストから始めましょう。
STEP2 優先順位付け(ティア分け):リストを「Tier1:1社ごとに個別施策を行う最重要企業」「Tier2:業界単位でカスタマイズする企業群」「Tier3:ツールで効率的にアプローチする企業群」に分類し、かけるリソースを傾斜配分します。
STEP3 キーパーソンの特定:ターゲット企業の組織を調べ、決裁者・推進者・現場評価者を洗い出します。BtoBの購買には複数の関係者が関与するのが通常のため、役割ごとに刺さるメッセージを設計します。
STEP4 施策・チャネル設計:企業ターゲティング広告、業界特化ウェビナー、導入事例コンテンツ、手紙・ギフトなどのダイレクト施策、展示会での個別アポイントなど、Tierに応じてチャネルを組み合わせます。「その企業の課題を名指しで語る」個別性が成果を分けます。
STEP5 営業連携と運用:ターゲット企業の反応(サイト訪問、資料DL、ウェビナー参加)を営業へリアルタイムに共有し、アプローチのタイミングを合わせます。週次でマーケティングと営業が同じダッシュボードを見る定例を設けることが、形骸化を防ぐ最大のポイントです。
実行イメージを具体例で補足します。たとえば製造業向けSaaSを提供する企業が「従業員300名以上の食品メーカー30社」をパイロットリストに設定した場合、Tier1の5社には決裁者向けの個別提案資料と手紙+電話、Tier2の10社には食品業界特化ウェビナーと業界事例集、Tier3の15社には企業ターゲティング広告とメールナーチャリング、という組み合わせになります。すべてのアカウントに同じ施策を打つのではなく、「重要度に応じて個別性の濃度を変える」のがABMの実務です。既存のホワイトペーパーや導入事例も、冒頭とタイトルを業界向けに書き換えるだけで十分に機能するため、コンテンツはゼロから作る必要はありません。
ABMのKPI設計と計測のポイント

ABMでは、従来の「リード数・CPA」中心のKPIは機能しません。測るべきは「ターゲットアカウントがどれだけ動いたか」です。具体的には次の階層で設計します。
①カバレッジ:ターゲット企業のうち、キーパーソンの連絡先・接点をどれだけ確保できているか。②エンゲージメント:ターゲット企業からのサイト訪問・コンテンツ閲覧・イベント参加がどれだけ増えたか。③商談化:ターゲット企業との商談数・商談化率。④受注・拡大:受注額、平均取引額、受注までの期間、既存アカウントのアップセル額。
ポイントは、リードや個人単位ではなく「企業(アカウント)単位」で集計することです。また、ABMは成果が出るまで一定の時間がかかるため、四半期単位で先行指標(カバレッジ・エンゲージメント)を確認しながら、ターゲットリスト自体も定期的に見直します。「反応がまったくない企業を外し、想定外に反応が良い類似企業を加える」という運用の繰り返しが精度を高めます。
ありがちな失敗パターンも押さえておきましょう。①ターゲットリストをマーケティング部門だけで作り、営業が「その企業は狙っていない」と使わない、②リスト数を欲張りすぎて1社あたりの施策が薄まり、結局従来型の一斉配信と変わらなくなる、③従来のリード数KPIを残したまま始めてしまい、社内評価とABMの活動が矛盾する、の3つが代表例です。いずれも「始める前の合意形成」で防げるものです。特に3つ目は重要で、ABMのパイロット期間中はリード数目標の対象外とするなど、評価制度側の手当てをセットで行うことをおすすめします。
まとめ:小さく始めて、営業と一緒に育てる

導入初期のスケジュール感の目安も示しておきます。1カ月目にターゲットリストの作成と営業との合意、2カ月目にTier分けとキーパーソン調査・コンテンツの業界向けカスタマイズ、3カ月目から施策実行、4〜6カ月目で先行指標(エンゲージメント)を確認しつつリストを1回転見直し、6カ月時点で商談化の実績を評価して本格展開を判断する――と、半年をワンサイクルとする設計が標準的です。
ABMは「全社の仕組みを一気に変える」ものではなく、10〜30社のパイロットリストと既存コンテンツの組み合わせから小さく始められる戦略です。成否の8割は、ターゲット選定の段階で営業と合意できているかどうかで決まります。まずは自社の優良顧客の共通点を分析し、営業と一緒に「本当に攻めたい企業リスト」を作ることから始めてみてください。
Semuis株式会社では、BtoBマーケティングの戦略設計からターゲットリストの作成、コンテンツ制作、営業連携の仕組みづくりまで一貫してご支援しています。「ABMに興味はあるが何から始めるべきかわからない」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。note→ https://note.com/yamakami_semuis
