お電話でのお問い合わせ(平日8:00〜19:00)

TEL 050-5497-2977

メンター制度とOJT・エルダー制度・ブラザーシスター制度の違いとは?

2026.09.18

  • BtoBマーケティング

新入社員や若手社員の育成策を検討していると、メンター制度、OJT、エルダー制度、ブラザーシスター制度という四つの名前が並びます。どれも「先輩社員が後輩社員を支援する仕組み」に見えるため、社内の議論では区別されないまま話が進みがちです。

しかし、この四つは目的が異なり、担当者と対象者の関係も、続く期間も違います。違いを整理しないまま複数を同時に走らせると、現場の先輩社員に役割が重複して負荷が集中し、対象者はどの相談を誰に持っていけばよいかわからなくなります。本記事では、各制度の定義から、目的・関係・期間の違い、併用時の役割分担、そして自社にどれが向くかの判断軸までを解説します。

4つの制度の定義を整理する

まず、それぞれが何を指す仕組みなのかを確認します。名称は企業ごとに揺れがありますが、一般的な理解は次のとおりです。

メンター制度は、経験のある社員(メンター)が、他部署の後輩社員(メンティー)と定期的に対話し、業務の悩みからキャリア、働き方に関する不安まで幅広く支援する仕組みです。厚生労働省は平成25年4月に「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」を公開しており、女性社員の活躍推進のためのポジティブ・アクション展開事業の一環として、導入の手順と運用上の留意点を整理しています。

OJT(On the Job Training)は、実際の業務を通じて必要な知識・技能を習得させる教育方法です。制度というより育成の方式を指す言葉で、日常の業務遂行そのものが訓練の場になります。指導役は多くの場合、同じ部署の先輩社員や直属の上司が担います。

エルダー制度は、同じ職場の先輩社員(エルダー=年長者の意)が、新入社員の業務指導と職場適応の両面を担当する仕組みです。OJTの指導役を制度として明示的に任命し、育成責任を明確にしたものと捉えるとわかりやすいでしょう。

ブラザーシスター制度は、新入社員に対して年齢の近い先輩社員を「兄・姉」役として配置し、業務面と精神面の両方を支援する仕組みです。エルダー制度とほぼ同義で運用されることも多く、より年次の近さと親しみやすさを強調した呼称と理解して差し支えありません。

なお、メンターという言葉そのものの意味や制度全体の位置づけを先に押さえたい方は、メンターとは?意味・役割の基本もあわせてご確認ください。

目的の違い:業務スキル習得か、精神的支援・キャリア支援か

四つを分ける最も大きな軸は目的です。ここを取り違えると、制度設計のすべてがずれていきます。

OJT、エルダー制度、ブラザーシスター制度に共通する主目的は、業務スキルの習得と職場への適応です。担当する業務を一人で遂行できる状態にすること、社内の手順やルールを覚えること、部署内の人間関係に馴染むこと。ゴールは比較的明確で、達成度も「一人で対応できる業務の範囲」として観察しやすい性質を持ちます。ブラザーシスター制度はこれに加えて、精神面のフォローを明示的に含める点が特徴です。

対してメンター制度の主目的は、精神的な支援とキャリア形成の支援にあります。目の前の業務ができるようになることではなく、本人が中長期的に働き続けられる状態をつくることを狙います。そのため扱うテーマは、業務の悩みだけでなく、数年先のキャリア観、部署異動の迷い、ライフイベントとの両立、社内での立ち居振る舞いといった、正解のない領域まで広がります。

この目的の違いは、支援者に求められる関わり方にも表れます。OJTやエルダー制度では、正解を持っている側が教えることが効率的です。手順やルールに自分で気づかせようとするのは非効率であり、対象者を消耗させます。一方メンタリングでは、教えるよりも聞く姿勢が中心になり、本人が自分で答えにたどり着く過程を支えます。この関わり方の違いは、対話手法の違いとしても整理できます。詳しくはメンタリングとコーチング・ティーチング・1on1の違いをご覧ください。

目的の設定は、実態として何を解決したいのかに立ち返って決めるべきものです。日本メンター協会が2022年9月に実施した「メンター制度導入実態調査」(有効回答500件)では、メンター制度の導入目的の1位が「職場のコミュニケーション活性化」、2位が「メンタルヘルス対策」でした。導入効果については7〜4(普通以上)と回答した担当者が88.2%に達しており、同調査では社員の定着促進策として有効なものの2位に「メンターとの定期的な対話」が挙げられています。業務習熟が課題ならOJT系、関係性や定着が課題ならメンター制度、という切り分けが出発点になります。

担当者と対象者の関係・期間の違い

目的の次に重要なのが、誰が担当するかという関係の構造です。

OJT、エルダー制度、ブラザーシスター制度では、担当者は原則として同じ部署の先輩社員です。日々の業務を一緒に進める必要があるため、物理的にも組織的にも近い位置にいることが前提になります。多くの場合、担当者は対象者の業務評価に何らかの形で関与するか、少なくとも評価者である上司に日々の様子を報告する立場にあります。

メンター制度では逆に、直属の指揮命令系統から外れた他部署の社員が担当するのが基本です。評価権を持たない相手だからこそ、対象者は「実はこの仕事が向いていないのではと悩んでいる」「チーム内で孤立している気がする」といった、部署内では出しにくい話を持ち込めます。この斜めの関係こそがメンター制度の設計上の要であり、ここを崩して直属の先輩をメンターに任命すると、実質的にエルダー制度と変わらなくなります。

期間にも違いがあります。OJT系の仕組みは、業務が一人でこなせるようになるまでが目安で、新入社員向けなら入社後3カ月から1年程度に設定される例が多く見られます。習熟という明確な終点があるため、期間の判断はしやすい部類です。メンター制度は半年から3年程度と幅があり、新入社員の立ち上がり支援なら半年から1年、キャリア形成支援なら1年以上と、目的に応じて変わります。いずれも自社の対象者層や業務の繁閑に応じて調整してください。

もう一つの違いが、対話の場の性質です。OJT系では業務の合間に随時指導が行われ、改まった面談を設けないこともあります。メンター制度では、月1回1時間程度といった定例の面談を確保するのが一般的です。日常業務から切り離された時間があることで、目の前のタスク以外の話題が出てきます。面談の具体的な進め方はメンタリングとは?意味・効果・面談の進め方にまとめています。

併用する場合の役割分担と注意点

実務では、これらを排他的に選ぶのではなく併用することが多くなります。新入社員に対して、部署内のOJT担当者が業務を教えつつ、他部署のメンターが精神面とキャリアを支えるという二層構造が典型です。この設計は有効ですが、いくつかの注意点があります。

第一に、役割の境界を対象者に説明することです。担当者が二人いる状態で、どちらに何を相談すればよいかを本人が判断できなければ、結局どちらにも相談しないという結果になります。「業務の進め方や社内手順はOJT担当へ、キャリアや働き方の悩みはメンターへ」といった目安を、配属時のオリエンテーションで明示します。境界は厳密である必要はなく、迷ったらどちらに話してもよいと添えておくと安心感が増します。

第二に、担当者を兼務させないことです。同じ人物がOJT担当とメンターを兼ねると、評価につながる指導の場と本音を話す場の区別がなくなります。人員の都合で兼務させたくなる場面はありますが、兼務した時点でメンター制度の固有の価値は失われると考えたほうが正確です。

第三に、情報の流れを設計することです。メンタリングで話された内容は、原則として本人の同意なく上司やOJT担当へ共有しないというルールを置く必要があります。この守秘が担保されていなければ、対象者は制度を信頼しません。ただし、ハラスメントや健康上の重大なリスクを察知した場合の例外対応だけは、あらかじめ定めておきます。

第四に、担当者側の負荷を管理することです。OJT担当もメンターも、本来の業務に上乗せされる形で役割を担います。面談や指導の時間を勤務時間内に確保する、担当者の上司にその役割を伝えておく、事務局が定期的に負荷をヒアリングする。こうした支えがないと、善意に依存した運用は静かに息切れします。誰を担当者に任命するかという人選の観点はメンターの選び方・人選基準とマッチングで整理しています。

まとめ:自社にどれが向くかの判断軸

ここまで四つの制度の定義、目的・関係・期間の違い、併用時の設計を見てきました。最後に、自社にどれが向くかを判断するための軸を整理します。

第一の軸は、解決したい課題の所在です。配属後の立ち上がりが遅い、業務品質にばらつきがある、教える人によって指導内容が違う。こうした課題ならOJTの標準化やエルダー制度の整備が先です。一方、早期離職が続いている、部署をまたいだつながりがない、若手が何に悩んでいるか見えない、といった課題ならメンター制度が噛み合います。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒)では、就職後3年以内の離職率は大卒で33.8%、高卒で37.9%とされており、定着が課題である企業は少なくありません。

第二の軸は、社内の人員規模と部署構成です。メンター制度は他部署から担当者を出す前提のため、一定の規模と部署数がないと組みにくい面があります。小規模な組織では、まずブラザーシスター制度のように年次の近い先輩を配置し、精神面のフォローを業務指導とセットで担わせるほうが現実的な場合があります。

第三の軸は、運用を支える事務局の体制です。メンター制度は、ペアリング、研修、守秘ルールの周知、実施状況の把握、ペア変更の受付といった運営業務が発生します。この担い手を確保できないまま制度だけ作ると、半年で形骸化します。厚生労働省のマニュアルが示す導入5ステップ、すなわち目的の明確化、ルール・運用体制の構築、メンターの選出・育成、制度の実施、面談実施と改善の反復のうち、二番目と五番目が抜け落ちやすい工程です。

結論として、業務習熟が課題ならOJT系、定着と関係性が課題ならメンター制度、その両方に手を打つなら二層構造での併用が基本形になります。いずれの場合も、目的を一つに絞り、担い手の負荷を業務として認め、走らせた後に測って直す前提で設計することが成否を分けます。

Semuis株式会社では、BtoB企業のマーケティング・セールス組織における人材育成の設計をご支援しています。OJTとメンター制度の役割整理、運用ルールの策定、事務局フローの構築などをご検討の担当者様は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。現状の課題整理からご一緒します。

まずは情報交換、
お悩み相談からでもお気軽に

トップページ