二重価格表示とは?景品表示法のルールと違反事例・ECセール表示の注意点をわかりやすく解説
2026.07.28
- ECモール
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「通常価格5,980円→セール価格3,980円」のように、比較対照となる価格を併記して割引をアピールする「二重価格表示」は、ECサイトやモールのセールで日常的に使われる訴求手法です。しかし、その表示ルールは景品表示法で厳しく定められており、近年はECサイトに対する消費者庁の措置命令が相次いでいます。知らずに運用していると、ある日突然行政処分と社名公表のリスクに直面しかねません。本記事では、二重価格表示の基本、景品表示法上のルール、実際の違反事例、そしてEC実務で使えるチェックリストをわかりやすく解説します。
二重価格表示とは?基本と効果

二重価格表示とは、実際の販売価格に、それより高い「比較対照価格」を併記する表示方法です。比較対照価格には「当店通常価格」「メーカー希望小売価格」「他社の販売価格」などが用いられ、「通常価格○○円のところ、今だけ△△円」といった形で値引きのお得感を演出します。
価格の安さを直感的に伝えられるため、CVR(転換率)向上に有効な定番施策であり、楽天市場のスーパーSALEやAmazonのプライムデーなど、大型セールでは欠かせない訴求手法です。適正に行われる限り、消費者にとっても有益な情報提供となります。
問題は、その比較対照価格に実態がない場合です。実際にはほとんど販売実績のない高い価格を「通常価格」と称して表示すれば、消費者は「本当は安くないのに安い」と誤認します。これが景品表示法の禁止する「有利誤認表示」に該当し、行政処分の対象となります。
二重価格表示で用いられる比較対照価格には、主に次の種類があります。(1)自店の過去の販売価格(当店通常価格)、(2)メーカー希望小売価格、(3)競合他社の販売価格、(4)セール後に予定している将来の販売価格です。それぞれ認められる要件が異なり、最も使われる(1)の過去販売価格には後述する「最近相当期間」の実績要件が課されます。どの種類の価格を比較に使っているのかを自覚的に区別することが、適法な運用の第一歩です。
景品表示法における有利誤認表示のルール

景品表示法5条2号は、価格などの取引条件が実際よりも著しく有利であると誤認させる表示(有利誤認表示)を禁止しています。二重価格表示の適否は、消費者庁のガイドライン「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)に沿って判断されます。実務上、特に重要なのが以下のポイントです。
- 同一商品であること:比較対照価格は、同一の商品について過去に実際に販売していた価格でなければなりません。型番違い・仕様違いの商品の価格を引き合いに出すことはできません。
- 「最近相当期間」の販売実績があること:過去の販売価格を比較対照とする場合、その価格で「最近相当期間にわたって販売されていた」実績が必要です。一般的な目安として、セール開始時点から遡る8週間のうち過半(4週間超)でその価格で販売されており、かつその価格での販売終了から2週間以上経過していないこと、販売期間が通算2週間以上あることが求められます。いわゆる「8週間ルール」です。
- 将来の販売価格を用いる場合の注意:「セール後は○○円になります」といった将来価格との比較は、確実にその価格で相当期間販売する予定がある場合にしか認められず、極めてリスクの高い表示とされています。
- 希望小売価格・競合価格の根拠:メーカー希望小売価格はカタログ等で公表されているものに限られ、競合他社の価格は正確に調査した実売価格である必要があります。
具体例で確認しましょう。たとえば、ある商品を5月1日から6月25日まで(8週間)のうち5週間にわたり5,980円で販売し、その後すぐに「通常価格5,980円→セール価格3,980円」と表示するのは、過半の販売実績があるため原則として問題ありません。一方、発売直後から一度も5,980円で売ったことがない商品に「通常価格5,980円」と表示したり、2週間だけ形式的に高い価格を付けてすぐセールに戻したりする表示は、実態のない比較対照価格として有利誤認表示に該当するおそれが高くなります。「販売実績のカウントはセール開始日から遡って計算する」という点を、価格設定の担当者が正しく理解しておくことが重要です。
違反事例と措置命令・課徴金のリスク

近年、二重価格表示に対する執行は明らかに強化されています。2024年から2025年にかけて、実態のない「通常価格」を用いた二重価格表示に対する措置命令は8件にのぼり、2025年11月にはドラッグストア大手グループのECサイトにおける「通常価格」表示に対して措置命令が出されるなど、業種・販売形態を問わず摘発が続いています。大手ECサイトであっても例外ではなく、むしろ販売データが残るECは違反の立証が容易であるため、調査対象になりやすいという指摘もあります。
違反が認定された場合のリスクは深刻です。
- 措置命令:再発防止策の実施や一般消費者への周知(新聞広告等)が命じられ、事業者名が公表されます。報道により企業イメージが大きく毀損されます。
- 課徴金納付命令:有利誤認表示には、対象商品の売上額の3%の課徴金が課される場合があります。対象期間は最長3年で、売上規模によっては数千万円〜数億円に達します。
- モール上のペナルティ:楽天市場やAmazonなどの各モールも二重価格表示に関する独自ルールを設けており、違反すると検索順位の低下、商品ページの非表示、最悪の場合は退店処分につながります。
「他店もやっているから大丈夫」という感覚が最も危険です。セールを多用するECこそ、価格表示の管理体制が問われています。
背景として、景品表示法の執行体制自体が強化されていることも押さえておきましょう。2023年10月にはステルスマーケティング規制が施行され、2024年10月には確約手続の導入や直罰規定の新設を含む改正景品表示法が施行されるなど、広告表示への規制は総じて厳格化の流れにあります。消費者庁は都道府県とも連携して監視を行っており、消費者からの通報がきっかけで調査に至るケースも少なくありません。ECサイトは表示がすべて記録として残るため「昔から続けてきた表示だから」という理由は通用しないと考えるべきです。
ECモール・自社ECでの実務チェックリスト

日々の運用で二重価格表示の適法性を担保するために、以下のチェックリストを活用してください。
- 比較対照価格の販売実績を記録しているか:いつからいつまで、いくらで販売したかを商品ごとに記録し、8週間ルールを満たすことを確認してからセール価格を設定する。価格変更履歴はCSVなどで保存しておく。
- 「通常価格」の実態はあるか:通常価格での販売がほぼゼロのまま、年中セール価格で売っていないか。常時セール化している商品は、セール価格こそが「通常価格」であり、二重価格表示はできない。
- セールの延長を安易にしていないか:「期間限定」と表示しながら機械的にセールを延長し続けると、期間の表示自体が有利誤認と判断されるおそれがある。
- メーカー希望小売価格の根拠資料を保管しているか:メーカーのカタログ・公式サイト等で公表されている価格であることを確認し、スクリーンショット等を保存する。
- モール独自ルールを確認したか:楽天市場では二重価格表示に関するガイドラインが定められており、表示可能な比較対照価格の種類や根拠が細かく規定されている。出店モールごとのルールを担当者全員が把握しているか確認する。
- セール企画時の承認フローがあるか:価格表示を担当者任せにせず、セール企画時に販売実績データと突き合わせて確認する承認プロセスを設ける。
特に大型セールの直前は価格設定作業が集中し、チェックが漏れがちです。セールカレンダーから逆算して、8週間前の価格運用から計画的に管理することが実務上のポイントです。楽天スーパーSALEやお買い物マラソン、Amazonプライムデーなど大型イベントの開催時期はある程度予測できるため、年間のセールカレンダーを作成し、「どの商品を・いつ・いくらで売るか」を 価格履歴とセットで管理する運用に切り替えると、コンプライアンスと売上計画の両方が安定します。
なお、二重価格表示ができない場合でも、「ポイント還元」「クーポン配布」「送料無料」など、比較対照価格を使わずにお得感を訴求する手段はあります。販売実績の要件を満たせない新商品のローンチ時などは、無理に二重価格を使わず、こうした代替施策を組み合わせるのが賢明です。
まとめ:正しい二重価格表示は「記録」がすべて
「モールのシステムが自動で表示する参考価格も自社の責任になるのか」という質問をよくいただきます。景品表示法上の責任を負うのは原則として表示内容を決定した事業者であり、店舗側が入力した価格情報に基づく表示であれば、店舗が責任を問われる可能性が高いと考えるべきです。モール任せにせず、自店の商品ページに表示されている比較対照価格を定期的に棚卸しし、根拠を説明できない表示は削除する運用をおすすめします。
二重価格表示は、正しく使えばCVRを高める強力な訴求手法ですが、比較対照価格に実態がなければ景品表示法違反となり、措置命令・課徴金・社名公表という重大なリスクを招きます。ポイントは、同一商品・最近相当期間の販売実績という要件を理解し、価格の変更履歴を記録・確認できる体制を作ることです。セールが常態化しやすいECだからこそ、価格表示のコンプライアンスが競争力の土台になります。
Semuis株式会社では、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなどのECモール運営支援を通じて、セール設計や価格戦略のご相談にも対応しています。「自社のセール表示がルールに適合しているか不安」「売上を落とさずに価格表示を見直したい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Semuis株式会社 代表取締役。BtoBマーケティング・セールス支援、ECコンサルティング、BPO、リスキリング事業を展開。まだ世に広まっていない優良企業の発掘と、挑戦欲の高い個人の成長に貢献することにコミット。趣味はブラジル音楽と筋トレ、読書など。note→ https://note.com/yamakami_semuis
